2015年12月18日
ハーゼルゼットのフリーデマン・バッハ:室内楽作品集
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このCDには大バッハの長男、ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(1710-1784)の3曲のトラヴェルソのためのソロ・ソナタ及び3曲の2本のトラヴェルソと鍵盤楽器のためのトリオが収録されている。
セカンド・トラヴェルソにはマリオン・モーネン、そしてチェンバロとフォルテピアノがジャック・オッグ、通奏低音のチェロにはヤープ・テル・リンデンのそれぞれベテラン奏者を配した手堅い巧みなアンサンブルが聴きどころだ。
ソロと通奏低音で書かれたものと鍵盤楽器のオブリガートが付くものとがあり、前者には基本的にチェロが加わっている。
フリーデマン・バッハの作品には既に漸進的な強弱やアクセントなどが求められ、父親とは明らかに異なった音楽語法を追究していたことが理解できる。
このためにオッグは曲によってフォルテピアノを使って、それまでのチェンバロでは表現し得なかったモダンな音楽のあり方を実践している。
特にソナタヘ長調Fk51はトラヴェルソのテクニックが駆使された難曲で、ハーゼルゼットとオッグの老練なアンサンブルが醍醐味だ。
今回彼らが使用した楽器は、ハーゼルゼットがアウグスト・グレンザー、モーネンがパランカのワン・キー・タイプ、テル・リンデンのチェロがグランチーノ、オッグのチェンバロはクシェ・モデル、ピアノはゴットフリート・ジルバーマン・モデルでピッチはa'=415Hz。
2005年にオランダで録音された曲集で音質は極めて良好。
フリーデマン・バッハの音楽はかなり個性的で、時折衝動に駆られて急くような音形の繰り返しや不意とも言えるモジュレーションの変化があり、彼の鋭利だが移ろい易い刹那的な音楽美学を反映している。
そうした音楽のあり方はほぼ同時代のミューテルやクラインクネヒトのトラヴェルソのための作品にも共通していて、いわゆる多感様式時代の過渡的な趣味の傾向だったに違いない。
大バッハが最も期待をかけて教育した息子だったが、その非凡な才能は当時の社会には受け入れられなかった。
それは彼の個人的な性癖が禍したとされているが、遺された作品には優れたものが少なくない。
例えばトラヴェルソ用の6曲のデュエットにもその目まぐるしい転調や半音階の中に迸り出るような斬新な楽想が満たされている。
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