2015年12月22日
イタリアSQのシューベルト:後期弦楽四重奏曲集
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イタリア弦楽四重奏団のレパートリーの中でもベートーヴェン、モーツァルトと並んでシューベルトは、彼らのコンサートのプログラムの三本柱を成していて、こうした作曲家の作品では意外にも彼らの自然な音楽性の発露よりも、隅々まで徹底した音楽設計を貫いた硬派的な演奏が聴き所だろう。
ここでも彼らは決してシューベルトの作品に溢れるカンタービレの再現ばかりに腐心するのではなく、むしろそれぞれの曲全体を見極めた音楽構成に注目して、かなり自制した厳しい演奏に仕上げているように思う。
それがシューベルトの作品に往々にして露呈される冗長さを感知させることなく、最後まで聴き終えることができる理由だ。
確かに彼らの歌うカンタービレは美しいし、いざという時にはその天性とも言うべき武器を存分に披露するが、常に個々の楽器間のバランスを失うことなく、統制されたカルテットの態勢を崩さないのは流石だ。
また時には豪快なダイナミクスを使って非常にドラマティックな曲作りを試みるのも彼らの手法だ。
彼らの合わせ技の秘訣のひとつに楽器の配置への特別な配慮がある。
第1ヴァイオリンとチェロ、そして第2ヴァイオリンとヴィオラが対角線に向き合う形で、チェロが内側に位置している。
更に総てのレパートリーを暗譜演奏していた彼らは楽譜に気を取られることなく、お互いのアンサンブルに集中できたことも、演奏自体に自由闊達な印象を与える要因になっている。
この2枚のCDに収められた4曲の弦楽四重奏曲は、いずれもシューベルト後期の作品で、第12番ハ短調D.703は第1楽章のみが完成されている。
前作からの転用も頻繁に聴かれ、第13番イ短調D.804『ロザムンデ』の第1楽章には歌曲『糸を紡ぐグレートヒェン』、第2楽章には劇音楽のテーマがヴァリエーションとして、また第14番ニ短調D.810『死と乙女』には第2楽章に同名の歌曲を利用している。
こうした作法は既にハイドンの『皇帝』に先例が見られる。
一方第15番ト長調D.887は、ひとつのシンフォニーのような壮大な構想を持っていて、規模も最も大きく、彼らの演奏時間も55分に及んでいる。
それだけにイタリア弦楽四重奏団ならではの、オーケストラを髣髴とさせるスケールの大きな表現が特徴だ。
また第4楽章は第14番と同様のイタリア風タランテラで、熱狂的な舞曲から昇華された緊張感と迫力に満ちた無窮動的な終楽章を締めくくっている。
D.810及びD.703が1965年、D.804が1976年、そしてD.887が1977年の録音になり、音質はこの時代のものとしては極めて良好で、当時のフィリップスの技術水準の高さを示している。
ブックレットは24ページで曲目紹介、録音データの他に英、独、仏、伊語の解説と後半部にはフィリップス・デュオ・シリーズのカタログが掲載されている。
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