2015年12月24日
セラフィンのオペラ序曲・前奏曲集
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
セラフィンはスカラ座黄金時代にカラスやテバルディなどのスター歌手を起用したイタリア・オペラを中心とする劇場作品の全曲録音を数多く遺していて、それらは未だにオペラ上演史上燦然と輝く名演であることに間違いない。
勿論この序曲集にもセラフィンの作品に対する演奏上の百戦錬磨のテクニックと劇場感覚的な秘訣が示されている。
それはオペラ劇場という特殊な空間でこそ本来の効果を発揮するものだが、このCDでもその巧みさは充分に感知できる。
そのひとつがオーケストラを呼吸させるように自由自在に歌わせるカンタービレで、しかも歌わせることによって緊張感が弛緩したり、音楽が冗長になることを完璧に避けている。
それはセラフィンが音楽構成の脈絡や起承転結を心得ていたからで、自然で大らかな歌の抑揚を横溢させながらドラマを進めていく手法は現在のイタリアのオペラ指揮者にも伝統的に受け継がれている。
ここに収録されている序曲や前奏曲はいずれもシンプルなオーケストレーションだが直接聴衆の感性に訴えて、幕開けを準備する雰囲気作りに奉仕されている。
トゥリオ・セラフィン(1878-1968)はトスカニーニの後を継いでスカラ座の指揮者に就任してから国際的な演奏活動を始める。
1923年からはニューヨークのメトロポリタン歌劇場にも10年ほど席を置いて、カルーソ亡き後のアメリカでのイタリア・オペラ隆盛にも貢献しているが、彼の劇場作品のレパートリーは多くの初演を合わせると243曲に上り、その中にはドイツ、ロシア物も含まれている。
またローザ・ポンセルやマリア・カラスなどにイタリア風のカンタービレやベル・カントを伝授して歌手の育成にも寄与した。
セラフィンは歌手の長所を巧みに引き出して、それを最大限活かす術を知り尽くしていたマエストロだったと言えるだろう。
アバドやムーティの時代に入ると過去の歌手達が慣習で歌っていたスコアには書かれていない装飾やカデンツァは一切排除する、いわゆる原典主義が定着するが、セラフィンの頃はまだ指揮者や歌手にも音楽への裁量がかなり認められていて、効果的な演奏と見做されれば拒まれなかった。
そうした柔軟なアプローチがこの序曲集を精彩に富んだものにしているのも事実だろう。
メディチ・アーツはBBC音源を中心にリマスタリングしたメディチ・マスターズ・シリーズをリリースしていた英国のレーベルで興味深いカタログを持っていたが、2010年以降新盤は出していない。
現在ではメディチtvという名称でDVD主体の販売を行っていて、これらの映像はベルリンに本拠を置くユーロ・アーツでも扱っているが歴史的音源のリイシューCD盤は打ち切られたようだ。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。