2015年12月28日
デ・サーバタのヴェルディ:レクイエム
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ヴェルディのオペラに関しては、伝統的な演奏法や言語の問題が加味される分だけある程度甲乙つけやすいが、そういった制約がなく、言わば指揮者の個性がそのまま浮き彫りにされるこの種の音楽に関しては、それぞれがそれぞれに魅力的で、なかなか判定しにくいものがある。
事実トスカニーニ、デ・サーバタ、ショルティ、ジュリーニ、カラヤン、アバド、ムーティの7つの盤は、全てどれを1位に推してもおかしくない程素晴らしい出来ばえを示していると言えよう。
その中からあえて鼻の差で抜きん出ている盤を選ぶとすれば、デ・サーバタの崇高な音楽はなんとも捨て難い。
ヴィクトル・デ・サーバタの数少ないスタジオ録音のひとつだが、プッチーニの『トスカ』と並んで、スコアから横溢するドラマを引き出す彼の恐ろしいほどの鋭い洞察力と、ソリスト、オーケストラ、コーラスを一瞬の弛緩も無く緻密に統率する優れた手腕が示された名演。
この時代の『ヴェル・レク』と言えば、まずトスカニーニの至高の超名演が思い出されるが、このデ・サーバタ盤も作品に注がれる情熱といい愛情の深さといい、彼渾身の熱演が繰り広げられている。
1954年にミラノ・スカラ座管弦楽団と合唱団を振ったモノラル録音で、音質的には恵まれていないが、音楽そのものを鑑賞するには現在でも充分価値がある。
作曲家として音楽活動を始めたデ・サーバタは、のちに指揮者としても活動を開始し、トスカニーニの後任として1953年までスカラ座で音楽監督を務めた。
体調不良のため同年引退し、1967年に死去するまでの14年間のうち、2回だけ指揮した。
1回はこの1954年に録音された『ヴェル・レク』、2回目は1957年の「トスカニーニ追悼コンサート」の時であった。
長い沈黙のはざまの演奏とは思えないほどのエネルギーほとばしる演奏で、単に彼の集中力の強さが衰えていない証拠であるばかりでなく、歴代の名盤としても数えられている。
ソリストの中でも驚かされるのはシュヴァルツコップの後年には聴かれないような大胆で奔放な歌唱で、おそらくこれは指揮者サーバタの要求した音楽と思われるが、後半の『リベラ・メ』のドラマティックな表現や『レクイエム・エテルナム』で聴かせる消え入るようなピアニッシモの繊細さも彼女の並外れたテクニックによって実現されている。
また『アニュス・デイ』でのメッゾ・ソプラノ、ドミンゲスとの一糸乱れぬオクターヴで重ねられたユニゾンの張り詰めた緊張感の持続も強い印象を残す。
テノールのディ・ステファノはライヴ演奏でもしばしば起用されたこの曲のスペシャリストでもあり、彼の明るく突き抜けるような歌声は宗教曲の演奏としては異例だが、ベル・カントの泣き節たる『ヴェル・レク』ではすこぶる相性がいい。
第10曲『インジェミスコ』の輝かしさは教会の中よりもむしろ劇場空間での再現が適している、一種のオペラのアリアであることを端的に物語っている。
チェーザレ・シエピについて言うならば、バスのパートをこれだけ完璧なカンタービレで歌いきった例も少ないだろう。
その深々として良く練り上げられた声質は重唱においても音程が正確で、他の歌手と共にヴェルディが書き記した対位法の各声部を明瞭に追っていくことが可能だ。
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