2016年01月09日

ルービンシュタイン&メータのブラームス:ピアノ協奏曲第1番


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ルービンシュタインは、ライナーノーツを読んでも分かる通り、ブラームスのピアノ協奏曲第1番について人一倍の愛着があったようで、実に4度にわたってスタジオ録音している。

ルービンシュタインはポーランド出身ということもあって、稀代のショパン弾きとしても知られてはいるが、前述のように4度にわたってブラームスのピアノ協奏曲第1番を録音したこと、同じくブラームスのピアノ協奏曲第2番も4度にわたって録音したこと、そして3度にわたってベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を録音したことなどに鑑みれば、ルービンシュタインの広範なレパートリーの中核を占めていたのは、ベートーヴェンやブラームスなどの独墺系のピアノ曲であったと言えるのかもしれない。

本盤に収められたブラームスのピアノ協奏曲第1番は、ルービンシュタインによる生涯最後のスタジオ録音となったものである。

最初の録音であるライナー&シカゴ交響楽団との演奏(1954年)、2度目の録音であるクリップス&RCAビクター交響楽団との演奏(1958年)、3度目の録音であるラインスドルフ&ボストン交響楽団との演奏(1964年)と比較すると、本演奏(1976年)は89歳の時の演奏だけに、技量においてはこれまでの3度にわたるスタジオ録音の方がより優れている。

しかしながら、本演奏のゆったりとしたテンポによる桁外れのスケールの大きさ、そして各フレーズの端々から滲み出してくる枯淡の境地とも言うべき奥行きの深い情感の豊かさにおいては、これまでの3度にわたる録音を大きく凌駕していると言えるだろう。

このような音楽の構えの大きさや奥行きの深さ、そして格調の高さや風格は、まさしく大人(たいじん)の至芸と言っても過言ではあるまい。

特に、同曲の緩徐楽章の深沈とした美しさには抗し難い魅力があるが、その清澄とも言うべき美しさは、人生の辛酸を舐め尽くした巨匠が、自らの生涯を自省の気持ちを込めて回顧するような趣きさえ感じられて大変感動的だ。

これほどの高みに達した崇高で人類愛に満ち溢れる情感豊かな音楽は、もはや涙なくしては聴けないほどであり、ルービンシュタインとしても最晩年になって漸く到達し得た至高・至純の境地と言えるのかもしれない。

ルービンシュタインの堂々たるピアニズムに対して、メータ&イスラエル・フィルも一歩も引けを取っていない。

メータはルービンシュタインの構えの大きいピアニズムに触発されたこともあり、持ち得る実力を存分に発揮した雄渾なスケールによる重厚にして渾身の名演奏を展開しているのが素晴らしい。

いずれにしても、本盤に収められたブラームスのピアノ協奏曲第1番の演奏は、同曲の演奏史上トップの座を争う至高の超名演と高く評価したい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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