2016年01月17日
イタリアSQの遺産
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解散して久しいイタリア四重奏団(1945−80)のユニヴァーサル傘下の音源を網羅したもので、1946年から1979年までの録音が収集された37枚のバジェット・ボックスになる。
ここで中核をなしているのがモーツァルトとベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集で、このふたつは彼らがその非凡な情熱と作品に対する真摯な姿勢で完成させた全曲ステレオ録音による記念碑的なレパートリーだ。
前者はフィリップスから刊行されたモーツァルト・エディション第12巻に組み込まれた8枚で、後者の録音は1967年から1975年にかけて8年がかりで遂行され、CD化された時には10枚組だったものが9枚にリカップリングされている。
その他にも彼らはシューマン、ブラームス及びヴェーベルンの弦楽四重奏曲全曲録音を達成しているが、いずれもカンタービレを武器にしたリリシズムが横溢する独自の解釈とオーケストラを髣髴とさせるメリハリを効かせた大胆なダイナミズムや密度の高いアンサンブルなどに彼らの面目躍如たるものがある。
イタリアでは2009年に1946年から1952年までのモノラル録音集7枚がアマデウスからリリースされていた。
それらがこのセットのCD1−6に当たるが、イタリア版に入っているテレフンケンやRAIイタリア放送協会に著作権が属する第1回目のドビュッシーやヴィンチ、タルティーニなどの音源は漏れている。
また彼らが得意とした20世紀の弦楽四重奏曲に関しては、当セットではドビュッシー、ラヴェル及びヴェーベルンのみだが、やはり著作権の異なるコロンビア音源のストラヴィンスキー、プロコフィエフ、ミヨーなどの作品群は現在英テスタメントからのリマスター盤が手に入る。
CD34にはドヴォルザークの『アメリカ』及びボロディンの弦楽四重奏曲第2番の「ノクターン」を含む全曲が、CD36にはプレミアム付で入手困難だったヴェーベルン作品集がそれぞれ復活したことを歓迎したい。
イタリア四重奏団はドビュッシーの弦楽四重奏曲を都合3回録音したが、CD35にラヴェルとカップリングされた演奏は1965年の最後のもので、質の良いフィリップス音源で鑑賞できるのは幸いだ。
他のふたつのセッションと比較しても、例えば第2楽章のピツィカートの応酬や迸り出るような色彩感など優るとも劣らないドラマティックな表現に驚かされる。
彼らは演奏に対する確固としたポリシーを掲げていた。
そのひとつがコンサートではプログラム全曲を暗譜で弾く形態をとったことで、それは奇しくも同時期に活躍していたスメタナ四重奏団と共通している。
楽譜に注意を逸らされることなく互いに音を聴き合いながら緊密なアンサンブルを心掛け、その上で各自が自由闊達な演奏を可能にした手法は、この演奏集にも良く表れていると思う。
勿論仕上げにかかる時間的な問題を解決しなければならなかったが、それは4人の練習時間の多さにも証明されていて、彼らの回想によれば新しいレパートリーには午前9時から午後1時まで、午後3時から夜半まで自己に妥協を許さない徹底した合わせ稽古が費やされた。
もうひとつがそれぞれの楽器に全員が金属弦を使ったことで、これは演奏環境や演奏自体によって変化を受け易いガット弦で起こり得る、楽章間での再調律を避けるためで、高まった緊張感を弛緩させることなく、ひとつの楽章から間髪を入れず次の楽章に進むことも可能にしていた。
72ページほどのライナー・ノーツにはこのセットに含まれる総ての演奏曲目の作曲家別索引とCDごとの詳細な録音データ及び英、独語による彼らのキャリアが掲載されている。
尚CD1−4、6、15、17、18、30、33、34の11枚の音源はデッカからは初のCD化になり、今回新しくディジタル・リマスタリングされたようだ。
例えばCD2には1952年のモノラル録音だが、アントワーヌ・ドゥ・バビエをクラリネットに迎えたモーツァルトのクラリネット五重奏曲がレストレーションされて蘇っている。
またポリーニと協演した最後の1枚、ブラームスのピアノ五重奏曲は彼らが1951年のザルツブルク音楽祭に参加した時に、フルトヴェングラー自身のピアノによって直接指導を受けたレパートリーになり、ポリーニとは既に1974年にコンサートで披露している。
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