2016年01月23日

シューリヒト/コンサート・ホール・レコーディングス


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ドイツの名指揮者、カール・シューリヒトがコンサート・ホール・ソサエティに残した録音を集成した10枚組BOX。

かつてDENONからCD15枚出されていたのだが、それを全部復刻しているわけではなく、権利の関係が絡んでいるのか、いくつかの録音が欠けているのが残念だが、リマスタリングによって蘇った冴え冴えとした音質がそれらを補って余りあると言えよう。

<Disc 1>ブル7はACCディスク大賞を受賞した名盤として知られているものだが、シューリヒトの演奏は、ブルックナーの本質を衝いた表現で、冒頭からこの指揮者特有の高雅な音楽性に引き込まれる。

その孤高の美と枯淡に通じる味わいの深さは、他の指揮者には求められないもので、ブルックナーの音楽美と内面性をこれほど端正に示した演奏も少ないだろう。

ハーグ・フィルも親密なアンサンブルでこれに応えていて、まさに傑作である。

<Disc 2>シューリヒトは、いたずらに小細工をせず、どの作品にも常に真正面から取り組んだ指揮者で、卓越した構成力には定評があった。

このワーグナーにはそうした彼の真価が如実に示されており、4曲とも造形のしっかりとした風格のある演奏だ。

やや淡泊な表現だが、次第に音楽を高潮させていつのまにか聴き手の心を魅了してしまうあたり、シューリヒトならではの見事な手腕である。

<Disc 3>「ライン」は冒頭から著しく感興の高ぶった表現で、シューリヒトとしては極めて情熱的な演奏だ。

弦合奏の立体的な処理や、歌の抑揚に巨匠的風格があり、優れた音楽であるのは間違いないが、南ドイツ放送響の技術がいまひとつ。

「マンフレッド」序曲は「ライン」よりも一段と優れており、作品の悲愴美と劇性、古典的様式を満足させた表現だ。

シューリヒトはウィーンで最も愛された指揮者のひとりだが、このシュトラウス鏡い留藾佞砲蓮⇔篭さと同時にある種の緊張感がある。

いわゆるウィーン的情緒を持った演奏ではないが、その骨格のしっかりした音楽の中には決して情緒が薄れたところはなく、ワルツやポルカの中に、単なる舞曲で終わらない何かがあることを示しているかのようだ。

<Disc 4>「ザ・グレイト」における南ドイツ放送響はアンサンブルが粗く、響きも磨かれているとは言えないが、演奏にはシューリヒトの音楽性が端的に示され、極めて率直かつ素朴、その中に一種の武骨さがあるのが、老巨匠の風格であり、シューリヒトらしいところだ。

<Disc 5>ヘンデルの合奏協奏曲集は、個性的な名演で、シューリヒトのスタイルは純音楽美の中に濃い人間味を漂わせたもので、まさに熾烈な精神の発露であり、即興的で痛切な命を実感させる。

厳しい鋭さと内容をたっぷり含んだ深い思索が素晴らしく、時には極めて優しいメルヘンのような表情さえ見せ、この指揮者の人間的な音楽性が窺えるのも興味深い。

<Disc 6>ブラ4は、シューリヒトのディスク中、1,2を争う名演で、彼は、ブラームスの晩年の諦観と孤独とロマンをことごとく表現しており、しかも作品のもつ古典的様式からもはずれることがない。

とくに第2楽章の端正で豊かな表現は実に魅力的で、バイエルン放送響も入念な表情と深い陰影をもって演奏している。

悲劇的序曲も凄い気迫をもった快演で、ハイドンの主題による変奏曲も、独自の様式と美感に支えられた秀演として、長く記憶に残したい演奏だ。

<Disc 7>シューリヒトのモーツァルトは、厳しい造形の中から精彩に満ちた生命力を表した、これこそ本当の音楽と言えるものだ。

3曲ともに率直な解釈で、さすがに大きな風格があり、一流とは言えないパリ・オペラ座のオーケストラから、堂々とした生命力豊かな音楽を引き出している。

とくに「プラハ」は香り高く、シューリヒトの気品高い表現は、今も存在価値を失わないと言えるが、これでオケがもっと良質なら、と惜しまれる。

<Disc 8><Disc 9>ブランデンブルク協奏曲全集は、シューリヒトの最後の録音であり、1967年度のACC大賞受賞盤。

自然で、しかも豊かな音楽性を反映した演奏で、シューリヒトの知的で洗練された個性はこの「ブランデンブルク」でも明らかだ。

音楽の流れは極めて自然で、明るい情感を兼ね備えているが、彼の音楽性は目立たないようでいて音楽のすみずみまで浸透し、それがいぶし銀のように底光りする魅力を生み出している。

チューリヒ・バロック合奏団は、シューリヒトの解釈を反映しながらも、自発性に溢れた見事な演奏だ。

ここで素晴らしいのは第1番で、素朴な解釈の中に、活気と楽しさと厳しさが共存した実に立派な音楽を作っており、ホリガーのオーボエも美しい。

第2番の天衣無縫な活気も印象的で、全体にシューリヒトの音楽性が溢れ、名手を揃えたソリストたちも、自発性に満ちた演奏を聴かせて、貴重な遺産と言える名盤だ。

<Disc 10>シューリヒトのメンデルスゾーンの演奏には造形性の確かさとともに、色彩的な表現への感性のようなものが見られ、それがほどよいバランスで独自の表情を生み出している。

ロマンティックな雰囲気にはやや欠けるものの、大指揮者の生命感が溢れた好演であり、この録音は彼が80歳に達してからの演奏と思えないほどの、若々しさや生き生きとした感覚に満ちている。

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Profile

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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