2016年01月25日

シュヴァルツコップ/コンプリート・リサイタル


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2006年に90歳で亡くなったエリーザベト・シュヴァルツコップがEMIに遺した1952年から1974年にかけてのリサイタル盤を集大成した31枚組のボックス。

オペラ全曲盤や彼女がソリストの1人として参加した声楽曲などは組み込まれていないが、CD29にはザルツブルク音楽祭でのフルトヴェングラーのピアノ伴奏によるヴォルフ歌曲集、CD30及び31はジェラルド・ムーアの引退記念コンサートがそれぞれライヴ録音で、また余白にはカラヤン、フィルハーモニア管弦楽団との協演になるベートーヴェンのアリア3曲が収録されている。

ちなみに更に古いSP録音時代のコンプリート・レコーディング集は同じくワーナーから今年リリースされる予定だ。

シュヴァルツコップの歌唱芸術は全く余地を残さないほどの作品への徹底したアナリーゼとそれを実際の演奏に完璧に反映させるだけの声のコントロールを駆使した彫りの深い表現力から成り立っている。

このために彼女の声質からは想像できないほどのドラマティックな歌唱も可能にしていた。

歌詞の一言一句から引き出される屈折した情念や推移する巧みな心理描写は、より率直な作風のモーツァルトやシューベルトでは裏目に出ていくらか厚化粧に感じられ、むしろヴォルフ、マーラー、リヒャルト・シュトラウスなどの作品に傑出した解釈を聴くことができる。

このセットではフルトヴェングラーとのライヴがその例で、1953年のモノラル録音ながら両者の洗練された感性がヴォルフの研ぎ澄まされた言霊への追究を際立たせている。

ヴォルフ歌曲集ではその他CD12−14及び20がジェラルド・ムーアの伴奏で都合4枚のアルバムを収録している。

リヒャルト・シュトラウスはCD3に『4つの最後の歌』が1953年のオットー・アッカーマン指揮、フィルハーモニア管弦楽団で、CD17には同曲とオーケストラを伴う5曲がジョージ・セル指揮、ベルリン放送交響楽団の1968年の録音で入っている。

後者は彼女が50歳を迎えた頃の至芸とセルの精妙なオーケストレーションで評価の高い演奏のひとつである。

一方セルとロンドン交響楽団との協演ではCD18の後半にシュトラウス歌曲集、CD19のマーラーの『子供の不思議な角笛』がどちらも1968年のセッションになる。

シュヴァルツコップはその類稀な才能だけでなく大きな幸運にも恵まれた。

それがHMVのレコーディング・プロデューサーで、後に夫君となるウォルター・レッグとの邂逅だ。

ここに収集された音源もレッグとのコラボなしには考えられない。

これはそれほど知られていない事実だが、彼女は戦前ナチス党員だったためにアメリカでのデビューは1955年まで待たなければならなかったが、多くの優れた録音によってシュヴァルツコップの名声をインターナショナルなものにした功績は、彼女の実力は勿論としてもその一端はレッグに負っていることも無視できないだろう。

ドイツの声楽界ではバリトンのフィッシャー=ディースカウと並ぶ双璧的な歌手だったが、シュヴァルツコップも完璧主義者という点では前者に優るとも劣らない存在だった。

CD1のエトヴィン・フィッシャーのピアノ伴奏によるシューベルト歌曲集が1952年の録音でこのセットの中では最も古いが、音源自体の優秀さに加えディジタル・リマスタリングの効果もあって、ノイズも歪みも殆んど聴き取れないほど良好だ。

EMIがステレオLP盤の正規販売を開始したのは1958年からなので、CD6及び9は例外として10枚目まではモノラル録音になる。

ライナー・ノーツは47ページほどで、総てのオリジナル・ジャケットの写真が印刷されているが、バジェット・ボックスらしく個々の演奏曲目と詳細なデータについてはそれぞれのジャケットの裏面にしか書かれていない。

尚シュヴァルツコップのキャリアとレコーディングに関してのエピソードは数葉のスナップ写真と共に英、独、仏語で掲載されている。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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