2016年02月04日
ハイティンク/フィリップス・イヤーズ
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オランダの名指揮者ベルナルト・ハイティンクの1959年から1988年までのフィリップス音源を20枚のCDにまとめたもので、音質は鮮明で分離状態の良いフィリップスが誇った音響が再現されている。
ハイティンクがコンセルトヘボウの主席指揮者に就任する以前の録音も含まれているので、その後の円熟期に至るまでの彼の足跡をパノラミックに展望できるのも魅力だろう。
実際、この頃のハイティンクのレコーディング・レパートリーは膨大で、例えば、ブルックナーとマーラーの双方の交響曲全集をレコーディングしたのは、この人が最初であった。
ハイティンクは1961年から1988年までロイヤル(アムステルダム)・コンセルトヘボウ管弦楽団で、1967年から1979年までロンドン・フィルハーモニー管弦楽団で首席指揮者を務めた。
この2つの世界的オーケストラを、これだけ長く振っていたというのも、特徴的なキャリアであるし、この時期というのは、いろいろと積極的な録音が展開された時期にも重なっている。
一方で、ハイティンクの才能が当初から広く認識されていたかと言うと、そうではない。
特に日本の批評は彼に対して芳しいものではなく、いわゆる「粗製乱造」とまでは言わないまでも、それに近い酷評をされていたし、それは当時の関連書物のいくつかに目を通せば明らかである。
しかし、いま改めてこれらの録音を聴いてみると、そのオーソドックスで暖かい音色と、豊かな中声部のふくらみを持った響きは、紛れもなく中央ヨーロッパのオーケストラ・サウンドを体現しており、彼は自身の個性よりも作品の特質を引き出すことに腐心した指揮者だと思う。
ウィーン・フィルとのブラームスの『ドイツレクイエム』の導入部分の天上的な美しさと、重い足取りの第2曲、そして壮大なフーガや終曲での諦観の表出は2人の優れたソリストの抜擢と相俟って、彼がブルックナーを始めとする純粋なオーケストラル・ワークだけでなく声楽曲の扱いにも第一級の腕を持っていることを証明している。
一方全集マニアの異名は、ハイティンクが1人の作曲家の作品を網羅的に、しかも徹底して研究せずにはいられない完璧主義の表れで、成し遂げた仕事の質と量には圧倒される。
確かにコンセルトヘボウはオペラを上演しないが、それでもハイティンクが残した交響曲、交響詩全集は同世代の他の指揮者を俄然凌駕している。
ハイティンクはまた広範囲の作曲家をカバーするオールマイティの指揮者だが、中でも得意とする現代音楽、例えば武満徹、メシアンなどで聴かせる鋭い感性とオーケストラへの強い統率力も聴きどころだ。
ライナー・ノーツは45ページほどで、詳細な曲目データの他に英、仏、独語で彼のフィリップス・イヤーズのキャリアが簡易に掲載されている。
ボックス・サイズは13X13X6,5cmでかなり大きめだが装丁はしっかりしている。
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