2016年02月14日

フルトヴェングラー&ウィーン・フィルのブルックナー:交響曲第5番(1951年ライヴ)


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1951年8月19日、ザルツブルク音楽祭における歴史的ライヴ録音で、伝説的なブルックナーとして有名なもの。

作品と指揮者が運命の糸で結ばれている、そんな磁力にも似た求心力を背景にうねるような起伏をもって再現された名演、熱演。

ウィーン・フィルの個性的な音と演奏が豊かであった時代の演奏であり、流暢で深い陰影をもった情緒的表現は、確かに伝説になるだけの価値のあるものだ。

フルトヴェングラーの指揮も、ブルックナーの信仰告白とも言うべきこの曲に対して、深い精神性に裏づけされて見事に音化されている。

フルトヴェングラーは、ドイツ・ブルックナー協会の会長をしていたので、いわば、ブルックナーの専門家であるが、そうした面目が、この古い録音の全面ににじみ出ている。

そうしたフルトヴェングラーの、ブルックナーの音楽に対する傾倒の深さを物語るかのような、内面的な燃焼度の高い、雄渾な演奏で、そのその強烈な個性と彫りの深い、雄大な表現には圧倒されてしまう。

個性的でスケールの大きい表現だが、あまりにロマン的で、ブルックナーの素朴さよりもフルトヴェングラーの音楽を聴く感が強い。

それでもこの指揮者の芸術的ルーツが、ブルックナーと同じところにあることを理解できる自然体の表現であり、そこに演奏の魅力もあるのである。

フルトヴェングラーの視点から再構成されたブルックナーという印象もあるが、その音楽の壮大さは比類がなく、やや晦渋な表現ながら、終楽章の雄大なスケール感は圧倒的である。

音楽の豊かなダイナミズムと、強い緊張感が維持されている第5番であり、この大胆なアゴーギクはフルトヴェングラーらしさを印象づけるものだ。

この演奏におけるフルトヴェングラーのドラマティックな音楽の盛り上げ方は、ブルックナー・ファンの間で意見の分かれるところだが、フルトヴェングラーならではの至高の世界を作り上げている。

現代においては殆ど聴かれない大時代的なアプローチとも言えるが、1951年においては一般的なアプローチであり、フルトヴェングラーの演奏が必ずしも特異なものであったとは言えない点に留意すべきであろう。

旋律のみずみずしいしなやかさ、地の底から噴きあげるようなブラスの和声の充実感、作為なく、ブルックナーの音楽そのものを感じさせる造型、あらゆる点で、もう二度と現れまいと思われるような演奏である。

精神的な高さと深さで、これを凌駕するような演奏は未だもって他にはなく、聴いた後に深い感動の残る秀演である。

フルトヴェングラーの手にかかるとブルックナー作品はにわかに神秘的気配を強め、神々しくなる。

素朴な味わいや木訥な語り口に思えていた特質がその性格を一変させ、深層心理に肉薄するメスとなって機能しはじめ、聴き手に迫るのである。

フルトヴェングラーの巨大な個性によって大きく包み込まれたブルックナーのスケールとロマン、そして全容から立ちのぼってくる言い尽くせぬ香気には何者にも抗えないようなところがある。

この指揮者の深遠でしっとりとしたロマンティシズムが打ち出された演奏であり、官能的かつ叙情的な誘導が最大の魅力になっている。

また、フルトヴェングラーは、なにを指揮しても決して急ぎすぎることがなかった。

悠揚迫らぬそのテンポは、まずは聴き手を落ち着かせるのに力を発揮したばかりでなく、さらに進んで揺るぎない信頼を勝ちとった、と言って良いだろう。

これぞフルトヴェングラー人気の根源のひとつ、という気がする。

この第5番では、そうした独特のグランド・デザインによりながらも、ブルックナーの楽想を生かし、音楽を生かすため、フルトヴェングラーはテンポを細かく動かし、表情に変化を与え、クレッシェンドを活用して強い緊張感を生み出している。

そして表出されたブルックナーの深奥から湧き起こる音楽的情熱と、深々とした祈り、見事だ。

フルトヴェングラーの凄さに圧倒されてしまう巨人の足音である。

今日のブルックナー解釈とは異なる世界に位置する歴史的名盤であり、かつてこの演奏によってブルックナーの洗礼を受けた諸氏も少なくあるまい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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