2016年02月16日

ギレリスのドイツ・グラモフォン全録音集


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エミール・ギレリスの演奏についてはしばしば鋼鉄のタッチだとか武骨とかの形容詞が使われるが、いずれも舌足らずの表現で筆者自身は彼のピアノに野放図な打鍵やある種の不器用さを感じたことは一度もない。

言い換えればギレリスに対するそうした批評は彼の奏法のごく一部を捉えたもので、決して彼の典型的な音楽性や解釈を言い表し得ていないと思う。

確かに彼が時として獅子のように突進することも事実だが、このグラモフォンに遺された24枚のCDを鑑賞するなら、ギレリスが例えばモーツァルトではデリケートなカンタービレを聴かせるセンスも持ち合わせていて、ベートーヴェンでは『ワルトシュタイン』や『ハンマークラヴィーア』に聴くことができる堅牢な音楽構成と究極的ダイナミズムの美しさとを、またショパンやリストでは非常にきめ細かで変化に富んだタッチを使い分けていることが理解できるだろう。

9枚目まではベートーヴェンのピアノ・ソナタ集で、彼の死によって全曲録音が完成しなかったのは残念だが、第1、9、22、24、25番の5曲を除いた27曲とベートーヴェン13歳の若書きの作品、選帝公ソナタ2曲が収録されている。

CD10−12の3枚はピアノ協奏曲を中心とするブラームス作品集で、ヨッフム&ベルリン・フィルとの2曲の協奏曲ではヨッフムによってドイツ的造形がしっかりと施されたオーケストラにサポートされている。

ギレリスの抑制を効かせた表現の中に力強いクライマックスを築いていくソロが際立った演奏だ。

更にショパンとシューベルトがそれぞれ1枚ずつ、モーツァルトが2枚、その他1枚という内訳になる。

CD18から24までの7枚はモノラル録音の、多かれ少なかれノイズを伴う1935年から1955年までの歴史的録音集で音質自体もいまひとつだが、ギレリス19歳から39歳にかけての感性の鋭さとアンサンブルへの情熱、そして一級のヴィルトゥオーソ゛としてのテクニックを披露している。

中でもCD19のメトネルのソナタ第5番は硬質で飾り気のない彼のピアニズムの典型だ。

また彼より若い世代のコーガンやロストロポーヴィチとの協演になるピアノ三重奏曲集も聴き逃せないだろう。

尚オリジナル・ジャケットのデザインを採用しているが、実際の収録曲とは合致しないものもある。

最後の24枚目は当初ウェストミンスターからのリリースだったが、このCDではハチャトゥリアンの協奏曲はカバレフスキーの協奏曲に差し替えられていて収録されていない。

英、独、仏語によるライナー・ノーツは66ページほどあるが、その大半が収録曲目及び録音データとアルファベット順作曲家別作品の索引に費やされている。

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classicalmusic at 00:42コメント(0)ギレリス  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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