2016年02月18日
アンタイのスカルラッティ:チェンバロ・ソナタ集
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ピエール・アンタイが2002年から2005年にかけて行ったセッション録音で、フランス・ミラールから分売されていたドメニコ・スカルラッティの49曲のチェンバロ・ソナタとフーガ1曲の3枚がまとまってバジェット価格盤でリイシューされた。
先ず印象的なのはチェンバロの鮮烈な音響が生々しい録音で再現され、アンタイの外見的なイメージからは想像できないような大胆不敵で豪快なスカルラッティが表現されていることだ。
今回彼の使用した楽器は2種類のヒストリカル・チェンバロのコピーで、どちらも音の立ち上がりが素早く減衰も早いため、音同士が干渉し合わない軽快ではじけるような小気味良さがあり、この曲集には最適の選択と言えるだろう。
アンタイは師レオンハルトの厳格なテクニックを受け継いではいるものの、師とは異なったより自由闊達で解放的な表現を好み、ここではそれが水を得た魚のように解き放たれて、可憐な歌心に加えて野心的で一気呵成の奏法を堪能できる。
おそらく数多いスカルラッティのソナタ集の中でも最も快活でダイナミックな側面を強調したものだろう。
スカルラッティのチェンバロ・ソナタのCDにはスコット・ロスやペーター=ヤン・ベルダーの全曲集も存在するし、ピアノで演奏したものを含めればホロヴィッツからバケッティまで多種多様の選択肢が提供されているが、特にマニアックな方でなければ、ピリオド楽器による簡易なセレクション盤として是非お薦めしたいのがこのセットだ。
50曲の抜粋だが選りすぐった作品が非常に効果的に配列されているので鑑賞者を引き込んでいく牽引力も魅力だ。
ピッチは明記されていないが、全曲ともa'=400Hz前後で現代ピッチより半音以上低いため、速いパッセージでも高音が神経質に響くことは避けられている。
また良く聴いていると調律法も現代のものとは微妙に異なっていてピリオド楽器の機能と和声の美しさが充分活かされている。
ここ数年アンタイはミラールから多くの再録音を以前より質の高い音質のCDでリリースしているが、彼の演奏も更に自在になり、多彩な表現力で聴き手に常に新鮮な驚きを体験させてくれる。
21ページほどのライナー・ノーツには仏、英語によるスカルラッティの作品についてアンタイへのインタビューが掲載されている。
尚収録曲目に関しては幸いこのページのイメージにボックス裏面の写真が掲載されているので参考にされたい。
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