2016年03月09日

ランチベリー&フィルハーモニア管のチャイコフスキー:3大バレエ(全曲盤)


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1982年にデジタル録音され、翌年7月に発売されたチャイコフスキー/3大バレエ音楽の全曲盤セット。

ランチベリーは、現在では知る人ぞ知るという存在に甘んじているが、バレエ音楽を専門にしている人だけあって、本BOXに収められたチャイコフスキーの3大バレエは、テンポ設定とリズム処理が巧みで、しかも各場面の情景描写が実にうまく、そうしたランチベリーの資質に見事に合致する楽曲であり、素晴らしい名演に仕上がったと言っても過言ではあるまい。

ランチベリーが自家薬籠中のものとしているチャイコフスキーのバレエ音楽だけに、巧みな棒さばきで各場面を的確に描き分けながら、作品の幻想的な持ち味をあますところなく表出している。

演奏スタイルは典型的な英国のロイヤル・バレエの流れを汲むもので、構成重視で洗練されたものであり、プレヴィンやボニングなどの演奏に近い。

前項で紹介したスヴェトラーノフのようなロシア的な民族色を全面に出したあくの強い表現など薬にもしたくなく、どこをとっても軽快で洗練された音彩に満たされているのが特色だ。

ランチベリーの本演奏におけるアプローチは明快そのものであり、楽曲を難しく解釈して峻厳なアプローチを行うなどということとは全く無縁であり、楽曲をいかにわかりやすく、そして親しみやすく聴き手に伝えることができるのかに腐心しているように思われる。

この『くるみ割り人形』『眠りの森の美女』『白鳥の湖』の全曲ヴァージョンでも、洗練された豊かな色彩と華麗なダイナミズム、そしてなめらかなフレージングを駆使してしっとり美しいチャイコフスキーならではの魅力を見事に表現している。

ランチベリーは前述のように、バレエ音楽のスペシャリストと言われているだけに、これらの曲を実に甘美でロマンティックな雰囲気で、表現し尽している。

全体にややテンポを速めにとりながらも、チャイコフスキー独特の抒情的な旋律をたっぷりと歌わせながら、どの曲も表情豊かにまとめている。

聴かせどころのツボを心得た演出巧者ぶりは心憎いばかりであり、ランチベリーの豊かな音楽性が本演奏では大いにプラスに働いている。

情緒的なものに過度にのめり込むことなく、かといって、非情につぱねるようなこともなく、知情意のバランスが無理なくとれていて、どの角度からみても、ランチベリーならではの、安定した性格の演奏と言えよう。

決してとりわけ優美であるとか、ファンタジー的であるという性格ではないが、個々のことが整然と把握されており、全体のバランスがよく、洗練されたスマートなプロポーションで、ランチベリーの力量のほどを物語るような安定した出来ばえを誇る内容だ。

ランチベリーとしても一番指揮者として脂がのっていた時期と言えるところであり、快速なテンポながらオーケストラをしっかり統率する様は充実感にあふれている。

ランチベリーのアプローチは、聴かせどころのツボを心得たわかりやすさを信条とするもので、何よりも各バレエの性格を的確につかんで、キャラクタライズする彼の手腕には感嘆させられる。

交響曲ではなく、バレエ音楽だけに、このようなアプローチは理想的であり、チャイコフスキーならではの親しみやすい旋律に満たされた同曲の魅力を、我々聴き手は安定した気持ちで満喫することができるのが素晴らしい。

いわゆるシンフォニックなコンサート・スタイルというより、バレエの舞台を彷彿とさせる劇場的な表現であるが、巧みに弦と管を融合させたオーソドックスな音楽づくりが、これらの曲の真髄を誤りなく、聴き手にメッセージされるのである。

その語り口の巧さといい、音楽的な洗練度といい、未だに魅力を失っておらず、文句のつけようがない見事な名演と言えるだろう。

全体として非常に完成度の高い出来ばえで、ほどよい距離を保ちながら、全体を的確に把握しており、危うさがない。

この3大バレエ全曲盤を聴くと、チャイコフスキーのバレエ音楽の楽しさを十分味わうことができる。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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