2016年03月09日

ゲルギエフ&マリインスキー劇場のチャイコフスキー:3大バレエ


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チャイコフスキーの3大バレエ音楽には様々な名盤が存在するが、現代のスタンダード的な名演と評せるのはゲルギエフ&マリインスキー劇場管弦楽団盤であろう。

ゲルギエフは、とかくクールな最近の指揮者の中で飛びぬけてスケールの大きな音楽性とヴァイタリティの持ち主であるが、その強みは彼が根っからの劇場育ちというところにあるといってよいだろう。

35歳という若さで名門サンクトペテルベルク・マリインスキー劇場の芸術監督という重責を担い、ソ連崩壊による混乱期を見事に乗り切った手腕は、並々のものではないし、その活動が祖国にしっかり根を下ろしているのも、心強い限りである。

抜群の音楽性や指揮テクニックだけでなく、自分の音楽にこうしたバックボーンを持っていることがゲルギエフへの信頼をいっそう大きなものにしているといってよいだろう。

「スーパー・ダイナミック・コンダクター」といわれるようにきわめてエネルギッシュな指揮は、同時にロマンティックで抒情的な表現にも秀でている。

しかもその才能の大きさに加えて、統率力とカリスマ性も現代の指揮者の中で群を抜いており、今世紀の音楽界を担う巨匠として活躍の幅を広げているのである。

ところで自由化のあと退潮の傾向を見せるところが多かった旧東側あるいは旧ソヴィエトの中で、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場はゲルギエフを音楽監督に迎えたことによって、予期せぬほどの好調ぶりを示した。

オーケストラもアンサンブルを整え、機能的な表現力を増して、かなり上質なものとなったが、このチャイコフスキーの3大バレエにも、それが明らかにされている。

どちらかといえばバレエのテクニックや舞台をそれほど意識したものではなく、演出やプリパレーションを含む振付けとの関連などはほとんど考えさせないほど、オーケストラルなレパートリーとなりきっていて、それだけに、ディスクとしてはいっそう楽しめる。

緊密なアンサンブルを率いて、パワフルかつハイ・テンションで突き進むゲルギエフの熱さにひるんでしまうが、表現にもオケの響きにも、生半可な洗練を持ち込まず、むしろ開き直ってゴリゴリとやってのけたところに、ゲルギエフの野性本能を感じる。

それだけにロマンティックな夢に浸らせる以上に、ドラマとしてのバレエ音楽に誘うシンフォニックなチャイコフスキーといえよう。

平坦に、浅く流れず、演奏全体が旋律もリズムも響きも垂直に積み重ねられていくような密度を誇り、曲が進めば進むほど感動の深度も深められていく。

ゲルギエフのもとで鍛え抜かれたマリインスキー劇場管弦楽団がすばらしく、気高く輝かしいロシアン・サウンドを満喫させる。

特に、《眠れる森の美女》は、《白鳥の湖》や《くるみ割り人形》に比べると、際立って特色のある音楽があまりないので、下手をすると平坦になってしまうし、それに結構長いので、まとめ方がちょっと難しいように思うのだが、そういうなかでゲルギエフは長さを感じさせず巧くまとめていると思う。

それに加えてゲルギエフは、ロシア人としての自信に溢れた表現で聴かせてしまうところが面白いのではないだろうか。

《くるみ割り人形》は、全曲がCD1枚に収まってしまうくらいかなりテンポが速いが、その一気呵成にタッタッとやったところが、逆に面白い。

その一方で、ゲルギエフの演奏は常に1曲ずつが、それぞれ手作りの料理みたいな印象を与える。

オーケストレーションにおいて既に巨匠の域に達していたチャイコフスキーが秘術を尽くしたこの大作バレエのスコアでも同様、あたかも一部屋ずつ、魔法の扉を初めて開けてゆくような鮮度の高さで料理してみせるのだ。

その演奏を特徴づけているのが弦の奏法で、序曲から終景の〈グラン・パ・ド・ドゥ〉まで、一味違った表現が新鮮な驚きをもたらす。

《白鳥の湖》で使用しているマリインスキー版はなかなかのクセモノで、チャイコフスキーのオリジナル・スコアに、削除や短縮、編曲、さらには他曲の挿入まで施される。

通常耳にする全曲盤はオリジナル譜を元にしているから、かなりの変更に戸惑うかもしれないが、本盤の演奏の方がより実際のバレエ上演に近いのである。

というのも《白鳥の湖》がプティパとイワーノフの演出によって蘇演された1895年以来、このバレエは猝昇遶瓩箸靴読堝阿涼楼未鮴蠅瓩襪海箸砲覆襪里世、本盤はその歴史的な蘇演をそのまま復元した画期的な演奏なのだ。

まさに、本場ならではの狎犬た演奏瓩粘咾れており、百年以上前に蘇演を手がけた由緒ある同オケに演奏を託したこともまた、この盤の真価を高めている。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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