2016年04月06日
アラウ・プレイズ・ブラームス[SACD]
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プラガ・ディジタルスSACDシリーズの新譜で、クラウディオ・アラウが1964年にラファエル・クーベリック、バイエルン放送交響楽団と行ったライヴからブラームスのピアノ協奏曲第1番ニ短調と、1963年スイス・ルガーノでの同じくブラームスの『ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ』変ロ長調の2曲が収録されている。
いずれもステレオ録音だが、特にピアノ協奏曲の音質はこの時代のライヴとしては極めて良好で、SACD化によって更に音場に奥行きが出て、鮮明かつ立体的な音響空間が再現されている。
彼らがピアノ協奏曲第2番を遺してくれなかったことが惜しまれるが、アラウは1960年にもジュリーニ、フィルハーモニア管弦楽団とのセッション、1963年及び1966年にハンス・シュミット=イッセルシュテット、北ドイツ放送交響楽団とのライヴ、1969年にはハイティンク、コンセルトヘボウ管弦楽団とのセッションによるブラームスの2曲のピアノ協奏曲を録音していて、アラウが如何にこれらの作品に情熱を傾けて精力的な演奏活動をしていたかが理解できる。
その中でこの1964年のライヴは当時61歳のアラウが円熟の境地を示した、またライヴならではの高揚感と緊張に貫かれている。
尚この音源はオルフェオ・レーベルからレギュラー・フォーマットのCDでもリリースされている。
アラウのブラームスをありきたりな言い方で表現するならば、泰然自若として悠揚迫らぬ演奏と言ったらいいだろうか。
ピアノ協奏曲第1番では第1楽章のテンポをむやみに速めず、マエストーゾの指示を誰よりもわきまえた厳格なアプローチと、そこから醸し出される骨太なロマンティシズムが横溢している。
クーベリック指揮するバイエルン放送交響楽団は、より明るく解放的なジュリーニ、フィルハーモニア管弦楽団と比較するとやや渋めの音色だが一糸乱れぬ高潔さがあり、また非常に幅広いダイナミクスで作品の核心に迫って来る凄みがブラームスの音楽には明らかに幸いしている。
シンフォニックなオーケストレーションを一層引き立てているのは手兵の強みかもしれない。
第2楽章アダージョでもテンポはかなりゆったりしているが、安っぽい甘美さやメランコリーなどは排除されて、常に高踏的な緊張感が保たれている。
終楽章では2番目のカデンツァあたりから展開されるアラウならではの豪壮華麗なピアニズムと相俟ってクーベリックの強力なサポートが荘厳なクライマックスを築き上げている。
『ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ』の音質はやや落ちるが、この手のライヴとしては及第点と言えるだろう。
アラウのテンポはやはり鷹揚で、充分な歌心を持ったカンタービレで主題のアリアが開始される。
後に続く25のヴァリエーションでも決して技巧が表面に浮くことはなく、あくまでも音楽性の表現としてのテクニックが示されたお手本のような奏法が彼らしい。
また各変奏ごとの性格付けや曲どうしの有機的な繋げ方も巧みで即物的な音楽になることを避けた、良い意味でスタイリッシュな演奏だ。
こうしたレパートリーを聴いていると彼が筋金入りのロマンティストだったことが理解できる。
フーガの最後の音が消えないうちに拍手が入ってしまうのが玉に瑕だが、この作品をこれだけ大きなスケールと流麗さで弾き切ったピアニストも稀ではないだろうか。
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