2016年04月07日
アルバン・ベルクSQのブラームス:弦楽四重奏曲全集、ピアノ五重奏曲(レオンスカヤ)
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2008年に38年に亘った演奏活動に終止符を打ったアルバン・ベルク四重奏団が、その全盛期に録音した、彼らにとっては2度目に当たるブラームスの3曲の弦楽四重奏曲とピアノ五重奏曲へ短調を収録した2枚組リイシュー盤になる。
当時のメンバーは結成当時からの第1ヴァイオリンのギュンター・ピヒラー及びチェロのヴァレンティン・エルベンの他、第2ヴァイオリンがゲルハルト・シュルツ、ヴィオラがトマス・カクシュカで、ピアノにはブラームスのスペシャリスト、エリーザベト・レオンスカヤを迎えている。
アルバン・ベルク四重奏団のブラームスは彼ら特有の鋭い感性に貫かれた演奏であるために、ある意味で聴く人を選んでしまうかもしれない。
しかもここに収められた4曲は作曲家が推敲に推敲を重ねた結果の、ひたすら個人的な思索の所産に他ならず、多くの聴衆を想定した音楽ではないからだ。
それはベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲にも喩えられるだろう。
人によってはいたたまれないくらい厳しい曲想だろうし、また好む人にとっては逆に限りなく深みのある室内楽のエッセンスが堪能できるといった複雑なプロフィールは、聴く人におもねることのないブラームスの気質を窺わせている。
楽器の扱いにも細心の注意が払われていて、例えば第3番変ロ長調第3楽章では、ブラームスが生涯に亘って愛着を示したヴィオラをリードさせる魅力的なスケルツォが展開する。
ここではトマス・カクシュカの精緻だがエネルギッシュなヴィオラ・パートが聴きどころだ。
彼らの持ち味でもある緊密なアンサンブルや強い集中力、そして果敢な表現力が縦横に駆使された熱演だが、一方で現代的に洗練されたクールなセンスが、これらの作品を通じて新時代のブラームス像を提示しているのではないだろうか。
ピアノ五重奏曲では当時既にブラームスでは一家言を持っていたベテラン、レオンスカヤが協演しているが、主導権を握っているのはアルバン・ベルク側で、これはポリーニ、イタリア四重奏団とは好対照をなしている。
後者はあたかもピアノ協奏曲のような華やかさがあって、輝かしくスケールの大きなブラームスに仕上がっているが、レオンスカヤ、アルバン・ベルクはあくまでも室内楽という範疇でのブラームスの小宇宙を描いた演奏と言えるだろう。
彼ら自体かなり個性的なカルテットなので外部からの協演者が入ると、時としてよそよそしい雰囲気が露呈されることが無きにしも非ずだが、この曲に関しては成功しているといって間違いない。
尚音源は1987年6月21日にウィーン・コンツェルトハウスのモーツァルト・ザールで行われたライヴ録音になる。
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