2016年04月19日

セラフィン&ローマ歌劇場のヴェルディ:歌劇『オテロ』


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



ヴェルディ晩年の傑作オペラ『オテロ』の歴史的録音では、カラヤンが1960年にデル・モナコ、テバルディを主役に起用したウィーン・フィルとの音源と、その6年前エレーデが同じキャストでサンタ・チェチーリアを指揮したイタリア勢による1954年録音の2組のデッカ盤を無視することはできないだろう。

カラヤン盤は流石にオーケストラの実力に物を言わせてドラマを抉り出しているが、歌に関しては音像がやや後退している感じが否めない。

エレーデは全盛期だった歌手陣に全力投球させて声の饗宴を実現しているが、逆にオーケストラの統率力ではいくらか弛緩していて時として冗長に感じられる。

一方セラフィン、ローマ歌劇場管弦楽団による当盤は、声楽とオーケストラのバランスでは絶品で、奏法が拮抗しつつ歌心に満たされた、しかし緊張感溢れる舞台を創り出している。

1960年録音だが新規にディジタル・リマスタリングされて生々しいサウンドが蘇っていて、対訳は省略されているが、トラック見出し付の英、仏、独語による簡易なシノプシスが掲載されている。

皮肉にもカラヤン盤と同年のリリースになったわけだが、こちらはRCAとの契約で主役2人をヴィッカースとリザネックに委ねていて、彼らの良くコントロールされた歌唱は高く評価できるが、持ち声をダイレクトに活かす朗々としたイタリア的美声とキレの良さ、そしてその表現力はデル・モナコ、テバルディには及ばない。

リザネックの声質は若き悲劇のヒロイン、デズデモナにしては暗めでいくらか太いのが玉に瑕だ。

ただしここではヤーゴをティト・ゴッビが演じていて、彼の声による演技は主役の2人以上に展開するドラマの要を押さえて恐るべきものがある。

第1幕の「乾杯の歌」からヤーゴの邪な野望と民衆を焚きつけて煽動する巧みな心理描写が見事だが、第2幕のアリア「クレード」と幕切れの「神懸けて誓う」でこのオペラの実質的なピークを形作っている。

ちなみにゴッビのヤーゴは1959年イタリア歌劇団来日の時の録画も残されていて、彼の舞台上での役者としての優れた演技も忘れ難いものだが、オペラ全体の出来栄えと録音の良さではこちらを採りたい。

ローマ歌劇場管弦楽団はウィーン・フィルやサンタ・チェチーリアに比べればいささか荒削りだが、その前身は『カヴァレリア・ルスティカーナ』や『トスカ』の初演を飾った、オペラ一筋に鍛えられたオーケストラでもあり、歌に付き随う柔軟な融通性と劇場的効果の表出に優れた腕を持っている。

セラフィンは戦前ローマ・オペラ座の音楽監督を10年以上に亘って務め楽団のテクニックを洗練させたが、晩年しばしば古巣に戻ってこのセッションでも聴かれるように1960年代初頭に彼らの一時代を築いている。

彼の指揮は徹底した声の表現による明快なドラマ作りにあり、それを妨げるような一切の小細工を避けているが、管弦楽法にも精通していて、カンタービレの真髄とも言える絶妙な指揮法とバランス技を縦横に駆使し、リリカルな場面と劇的な場面の交錯とその対比で稀に見る効果を上げている。

それは本来の伝統的なイタリア・オペラの姿でもあるだろう。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 22:55コメント(0)トラックバック(0)ヴェルディ | セラフィン 

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ