2016年04月23日
レージネヴァのヘンデル:初期イタリア作品集
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レージネヴァ3枚目のアリア集は、昨年1月に亡くなったロシアのメゾ・ソプラノ、エレナ・オブラスツォワに捧げられている。
収録曲目はヘンデルがイタリア滞在中に作曲したオペラやオラトリオを中心とした作品からの14曲で、その他トラック6には器楽合奏による『アグリッピーナ』のシンフォニアが加わっている。
オーケストラは前回と同様ジョヴァンニ・アントニーニ率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコで、先鋭的なピリオド・アンサンブルでは老舗になった彼らのフレッシュなサウンドでのサポートがソロを引き立てている。
またアントニーニは今回トラック12のオラトリオ『アポロとダフネ』より「いとも幸福な魂」でオブリガート・トラヴェルソを演奏していて、洗練されたレージネヴァの歌唱との息の合ったデュエットも聴きどころだ。
2015年1月の録音で音質は極めて良好。
ライナー・ノーツにはイタリア語及びラテン語歌詞に英、独、仏語の対訳付。
サハリン出身のコロラトゥーラ・ソプラノ、ユリア・レージネヴァは現在世界中のオペラ劇場でキャリアを積んでいるが、録音活動では目下バロックの作品に情熱を注いでいて、前回の宗教曲集『アレルヤ』の時に既にピリオド唱法をマスターしてヴィブラートを抑えたすっきりした無理のない歌唱と、レース刺繍のような華麗な超絶技巧を披露した。
ここでも第1曲目からその離れ技が全開だが、このCDではヘンデルのイタリアン・リリシズムを究めたいくつかのアリアが聴き逃せないだろう。
例えばトラック3のオラトリオ『時と悟りの勝利』から「棘を避けて薔薇を摘めよ」は後にロンドンで上演される『リナルド』の「私の泣くままに」と同一曲で、シンプルなアリアだけに歌手の表現力に総てがかかっている。
後奏でのドミトリー・シンコフスキーによるヴァイオリンのアドリブも効果的だ。
また同曲から最後の「天の選ばれし御使い」は声の魅力を最大限に活かしながら、レージネヴァは飾り気のない純粋な声楽の美しさを堪能させてくれる。
ヘンデルは21歳の時から3年(1706-1709)に亘ってイタリアに滞在し、アルカンジェロ・コレッリを中心とする作曲家達との交流によって自らの作曲技法に磨きをかけ、またべネデット・パンフィーリ枢機卿を始めとする有力者の援助を得て作曲活動とその上演の機会を与えられた。
ここに収録された総ての作品はイタリアで作曲されたか滞在中にスケッチされたもので、当時の典型的なスタイル、つまりカストラート歌手の唱法を念頭において書かれている。
ヘンデルは後にカストラート歌手達の勝手な装飾や物語の筋とは関連性のない自己顕示のためのアリアの改竄などに辟易したのか、あるいはこの曲種に限界を感じたためかイタリア・オペラの作曲を打ち切ってしまう。
しかし当CDに収録された作品から、彼がこの時期イタリア風カンタービレをすっかり手の内に入れていたことも想像に難くない。
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