2016年05月05日
シュタルケル&ブッフビンダーのベートーヴェン:チェロ作品全集
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シュタルケル磐石の態勢にブッフビンダーが瑞々しいピアノで応じたベートーヴェンのチェロ作品全集で、テルデック音源だがこの2枚組はアペックスからのリイシュー廉価盤になり、正規盤が入手困難なので事実上これが唯一の選択肢だ。
2回目のシェベックとのセッションでは壮年期特有の覇気と骨太な音楽性が表出されていたが、シュタルケルにとって3回目になったこの録音でも覇気は依然衰えていない。
ただ無駄と思われる表現は一切省いてよりシンプルになる一方で気負いも惑いもない余裕と安定感を感じさせる演奏が秀逸で、ベートーヴェンの古典的な音楽構成がすっきり提示されている。
特に第3番イ長調はことさら大曲然とした誇張が多い演奏の中で、両者の誠実だが風格を失わない王道的な再現を堪能できる。
ボヘミア出身でウィーンで学んだブッフビンダーのソリストとしての活動は現在でもウィーンを中心に続いているが、彼は若くしてアンサンブルのスペシャリストとして高い評価を受けていただけに、こうした伴奏に回っても主張すべきところは臆せずに確実な演奏とテクニックの冴えを聴かせている。
ヤーノシュ・シュタルケルは、その長いキャリアで自身の課題となるような作品を繰り返しコンサートのプログラムに採り上げたし、録音も異なった時期のものを数種類遺している。
バッハやコダーイの無伴奏作品がその代表的なレパートリーとして挙げられるが、彼はベートーヴェンの5曲のチェロ・ソナタも3回ほど全曲録音を行った。
一般的に良く知られているのはハンガリーの朋友ジェルジ・シェベックと協演した1960年のエラート音源で、これは最近ワーナーからイコン・シリーズに組み込まれて復活した。
それに対してこのブッフビンダーとのセッションは1977年に録音されていて、ベートーヴェンの同曲集では最後のものになる。
シュタルケルは既に53歳の円熟期に達していたが、ブッフビンダーはまだ31歳で本格的な演奏活動に入った時期だった。
この1年前に彼はハイドンのピアノ・ソナタ全集を完成させているし、シュタルケルとは1973年にシュヴェツィンゲン音楽祭でヨセフ・スークと共にベートーヴェンとメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲を演奏して、第一級のアンサンブル・ピアニストとしての腕も披露している。
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