2016年05月12日
コーガンのブラームス(モントゥー)&チャイコフスキー(シルヴェストリ):ヴァイオリン協奏曲
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メロディアからリリースされたレオニード・コーガン(1924−82)生誕90周年記念の協奏曲集である。
ブラームスがピエール・モントゥー指揮、ボストン交響楽団との1958年のモノラル・ライヴ、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲及びソロ・ヴァイオリンとオーケストラのための『瞑想』はコンスタンティン・シルヴェストリ指揮、パリ音楽院管弦楽団との1959年のステレオ・セッション録音になる。
ブラームスでは速めのテンポで疾駆するコーガンのソロが全曲を席捲していて、曲自体の持っている豊かなカンタービレとブラームス特有のうねるような情緒がいくらか萎縮してしまっている印象を受ける。
確かに強靭な精神力で弾き切っているのは事実でその緊張感と集中力は凄まじいが、音楽の流れがせわしくもう少し余裕が欲しいところだ。
モノラル録音で音響もデッドなので尚更そう聴こえるのかも知れない。
モントゥーは同年にシェリングともこの曲を録音しているが、テンポ設定はずっと落ち着いていてダイナミズムもきめ細かいしオーケストラに遥かに多くを語らせていて、シェリングの白熱のソロを見事にサポートしている。
尚このライヴでは何故か楽章ごとに拍手喝采が入っていて多少煩わしく感じられる。
一方チャイコフスキーはコーガンの持ち味が縦横に発揮された秀演で、ロマンティックな歌心と隙のない表現力が相俟って、彼の協奏曲の録音の中でも代表的なもののひとつに数えられるだろう。
第一声のテーマの歌い出しの美しさや第2楽章に湛えられた冷やかな抒情から終楽章のキレの良いテクニックを駆使した追い込みまでが大きなスケールで再現されている。
シルヴェストリ率いるパリ音楽院管弦楽団も良く統制されて巧妙なバックアップでコーガンを支えている。
最後に置かれた同メンバーによる『瞑想』は大曲の後の余韻を味わう贅沢なアンコール・ピースといったところで、こうした小品にもコーガンの技巧一点張りではないデリカシーが表出されている。
メロディア・レーベルのジャケットのデザインや装丁は相変わらず洒落っ気がないが、彼らもデジパック仕様を始めた。
CD化で初出のライヴと書かれてあるが、ライヴはブラームスだけで、チャイコフスキーの2曲は質のよいステレオ録音で、録音データが1959年としか表示されておらず、また客席からの雑音や拍手が全く聞こえないのでセッションだろう。
ブラームスはカナダのドレミ・レーベルから既にCD化されていたが、正規音源を使ったLPからの板起こしと思われる。
挿入されたライナー・ノーツには露、英、仏語の簡易な曲目解説とコーガンへの賛辞が掲載されている。
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