2016年05月13日

ベルグルンド&ヨーロッパ室内管のシベリウス:交響曲全集


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



フィンランドの指揮者、パーヴォ・ベルグルンドは当然ながら、自国のシベリウスの音楽に関しては唯一無二のスペシャリストであった。

それは、2012年にベルグルンドが鬼籍に入った後、もはやシベリウスの本質を衝いた演奏は世界中で二度と聴けなくなってしまった、と言い切ってよいほどの絶対的な意味においてである。

シベリウスは作曲界の仙人のような人物で、俗世を離れて山荘に隠り、もはや新たな野心も持たず、作風の垢を洗い流し、贅肉を削ぎ落としていった。

ベルグルンドもまた、演奏家の立場でシベリウスの後追いをしているかに見受けられる。

ヘルシンキ・フィルとの2度目の《全集》に飽き足らず、自らが「理想の楽器」と呼ぶヨーロッパ室内管弦楽団との再々録音を果たした。

ベルグルンドは、このオケの並外れたアンサンブルの素晴らしさと透明な響きで新たなシベリウス像を作り出そうという試みがなされている。

精鋭を選りすぐった小編成のオケの音程(ピッチ)の驚くべき確かさが、シベリウスの演奏様式に新しい規範(スタンダード)を創造している。

録音を重ねるごとにより洗練され、透明度が増し、3度目に至っては緻密さの極みとでも言おうか、スコアの読みの深さ、演奏魂の自由な羽ばたきが美しく調和し、彼の理想とするところのシベリウス像が明確に打ち立てられた演奏となっている。

シベリウスのオーケストレーションの枝葉末節に至るまで熟知したような鳴らせ方をしているのに驚くし、また様々なフレーズが新たに息を吹き返したように立体的に浮かび上がってくるのにも感心する。

オーケストラの集中度は素晴らしく、響きはどこまでもクリア、弦は実によくコントロールされており、木管の多彩なニュアンスはシベリウスの交響曲の大きな魅力を絶妙に浮き彫りにしている。

各フレーズの、実に緻密な表情はこのオケによって初めて可能となる新鮮なものばかりである。

弦と管のアンサンブルと木管の色彩の対比や合成で表現に微細な変化が生み出されて、実に精緻な仕上がりで聴き手を引き付けている。

怜悧なまでに冴え冴えとした音、磨き抜かれたピッチから生まれるシベリウスは、足跡ひとつない雪原のように僅かの染みもなく純白に輝く。

また、ヴィブラートを抑制し、アタックの角を立て、音の立ち上がりも鋭く、リズムも厳しく俊敏である。

こうしたいわば“荒ぶる響き”は、すべてベルグルンドの意志なのであり、あえてその響きを作り出しているのだ。

そうすることによって確かにテクスチュアはクリアになるし、実に男っぽい気骨のあるシベリウスの演奏が生まれる。

とりわけ木管による旋律の精妙なニュアンスのつけ方は出色、ダイナミックに鳴る金管も魅力で、シベリウス作品の旨みがさらに増した印象を受ける。

1音たりとも傾聴を誘わない瞬間はなく、今の音が次の音への期待を膨らませ、尋常ではない充実感に満たされる。

純粋にシベリウスの思考そのものへ近づけてくれる演奏で、筆者としては何度でも聴きたく、ぜひとも聴くべき!

今後ベルグルンドは何処を目指すのかと考えていたら、シベリウスの作品同様、やがて実体を失い、ついには消滅してしまって、筆者は追悼の念を強めている。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 02:49コメント(0)トラックバック(0)シベリウス  

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ