2016年05月15日
オイストラフのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ集(ライヴ)
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ダヴィッド・オイストラフは1962年にピアニスト、レフ・オボーリンと共にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲をセッション録音している。
その演奏は全く隙のない生真面目なもので、模範的だがオイストラフの個性が自在に発揮されているとは言えなかった。
敢えて言えば華やかさや喜びの表現が隠されてしまって、意気を抜くことができないほど厳格で緻密な再現になっている。
それはまたオボーリンの精緻だが遊び心の少ない伴奏に影響されていたのかも知れない。
それに反してこのライヴ録音の3曲からは、テクニック上のミスは多少あってもオイストラフが嬉々として演奏を愉しんでいる様子が伝わってくるし、二人のピアニストもそれぞれが表情豊かなサポートでこの曲集の多彩なプロフィールの表現を試みている。
チェコ・プラガの企画によるリマスター・ステレオ・ライヴ録音だが、SACDシリーズとは別のレギュラー・フォーマット仕様。
3曲の中でも相性の良かったリヒテルとの協演になる第6番イ長調が抑制された古典的な優雅さと安定感を感じさせて白眉だ。
ベートーヴェンは終楽章アレグロにテーマとヴァリエーションを置いているが、両者の呼応の巧みさがこの曲の流麗でしかも才気煥発な楽想を楽しませてくれる。
彼らの演奏で『クロイツェル』も聴きたいところだが、第5番『春』と第9番『クロイツェル』の伴奏は多くのコンサートでパートナーを務めた女流ピアニストのフリーダ・バウアーで、流石にオイストラフに見込まれただけあって、彼女も伴奏に回ってもソロに付き随うだけでなく自己の主張を忘れない個性派の演奏を聴かせている。
『春』ではストラディヴァリウスの明るい響きによって、第一声からまさに春の息吹きをイメージさせるような開放感に満ちている。
欲を言えば第3楽章スケルツォのシンコペーションの面白さはシェリング、ルービンシュタイン盤の方が絶妙だ。
『クロイツェル』では冒頭の短い無伴奏ソロ部分がオイストラフ特有の押し出しの良さで大曲の貫禄を感じさせているし、両急速楽章の協奏的なやり取りでも、しばしば聴かれる戦闘的な競演ではなく、圧倒的な余裕の中に音楽の豊かさを表現し得ている。
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