2016年05月17日
ザ・レジェンド・オブ・グスタフ・レオンハルト
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2012年に他界したグスタフ・レオンハルトが1984年から1996年にかけてフィリップスに遺した音源を15枚のCDにまとめたバジェット・ボックスで、この中の何枚かは現在既に入手困難になっているだけに今回の復活を歓迎したい。
チェンバリストとしては勿論、オルガニスト、ピリオド・アンサンブルの指導者、また指揮者として古楽復興の黎明期を支え、生涯古楽への情熱を傾けたパイオニア的存在感と、彼に続いた後継者達に与えた影響は計り知れない。
このアンソロジーではバッハは言うまでもなくクープランやラモーではフランス趣味を、またフレスコバルディやスカルラッティではイタリア様式を、更にブルやパーセルでは典型的なイギリス風の奏法を聴かせる多才さも聴きどころだ。
バッハの鍵盤楽器用の作品については他のレーベルからよりインテグラルなセットが入手可能なので、ここではむしろレオンハルトの幅広いジャンルに亘る古楽研究とその豊富なレパートリーを集成しているところに価値がある。
ピリオド楽器を使った古楽演奏の録音が試みられたのはそう古いことではない。
レオンハルト、アーノンクール、ビルスマやブリュッヘンなどによって博物館の調度品に成り下がっていたヒストリカル楽器が再び日の目を見るのは1960年代だが、それらの楽器を演奏可能なまでに修復して、その奏法を復元する作業は一朝一夕のことではなかった筈だ。
古楽を教える教師さえ稀だった時代にあって、おそらくそれは試行錯誤による古い奏法の再構築と演奏への全く新しい発想があったことが想像される。
チェンバロに関してはまだモダン楽器が主流だった頃に、初めてオリジナルの響きを堪能させてくれたのもレオンハルトだったと記憶している。
確かにこの頃既にヘルムート・ヴァルヒャがバッハの鍵盤楽器のための主要な作品を体系的に録音していたが、最大限の敬意を払って言わせて貰えば、彼はバッハの権威としてその作品を、チェンバロという楽器を媒体として表現したに過ぎない。
言い換えればバッハの音楽が楽器を超越したところにあることを教えている。
だからヴァルヒャはバッハ以外の作曲家の作品をチェンバロで弾くことはなかった。
彼とは対照的に楽器の音色や機能、あるいはその特性に沿って作曲された曲目の価値を蘇生させたのがレオンハルトではないだろうか。
彼はまた古楽器のコレクターでもあり、このセットでも何種類かの異なったチェンバロとクラヴィコードの個性的な音色を楽しむことができるが、幸いフィリップス音源も共鳴胴の中で直接採音したような鮮烈な音質で、繊細かつヒューマンな響きとスタイリッシュなレオンハルトの至芸を良く捉えている。
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