2016年05月20日

マルタ・アルゲリッチ アーリー・レコーディングス


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マルタ・アルゲリッチがデビューして間もなかった1960年から67年にかけて、ケルン及びハンブルクのふたつの放送局のラジオ放送用のために録音した音源を2枚のCDにまとめたもの。

聴く前は総てがモノラル録音という先入観からいくらかセピア調の音色を想像していたが、再生してみると第1曲目のモーツァルトから音響の伸展にも、また潤いにも不足しない瑞々しい音質で、正直言って期待以上の収穫だった。

この時代はLP盤に遅れてラジオのステレオ放送が試験的に始まったいわゆるFM黎明期で、一般のラジオの聴取者が専用のオーディオ機器で音楽鑑賞を楽しむのはもう少し後だったことを考えればモノラル音源なのはやむを得ないだろう。

ただし音質の明瞭さやノイズのないマスター・テープの保存状態は流石に管理の国ドイツのものだけあって極めて良好で、高度な鑑賞にも充分に堪えられる。

演奏曲目では当初からアルゲリッチの十八番で後にグラモフォンに正規録音することになるプロコフィエフやラヴェルの他に、彼女が逆にレパートリーから殆んど除外してしまうモーツァルトやベートーヴェンのソナタが聴けるのも貴重だ。

アルゲリッチはそのキャリアの始まりから現在まで演奏スタイルを殆んど変えていないピアニストだが、ここではその鋭い感性と強い個性から溢れ出るカリスマ性とスリリングな表現、そして尽きることのないエネルギッシュな奏法が既に全開だ。

彼女のモーツァルトのソナタは特有の閃きから発散する鋭敏な感性に支えられていて爽快だし、ベートーヴェンにしてもアルゲリッチがもしソナタ全集を完成させたならば、さぞ独創的なものが出来上がっただろうと思わせるアイデアに満たされていて、ここに収録された第7番の他には僅かなサンプルしか残されていないのが残念だ。

おそらく彼女はその性格から直感的に把握することが困難な曲に関しては敬遠したのかも知れない。

例えば楽理的に厳格で執拗な構成を持ったバッハやベートーヴェンの作品はかえってアルゲリッチの自由奔放なファンタジーの飛翔を妨げてしまったのではないだろうか。

一方CD2に収録された20世紀の作品群では、彼女は水を得た魚のように生気に溢れた自由闊達な演奏を繰り広げている。

こうした開拓の余地がある曲でのアルゲリッチの挑戦とも言える演奏は実際戦慄を覚えるほど凄まじいものがある。

それは当時20代だった彼女の強烈で迸る感性を反映させた解釈の典型であろう。

プロコフィエフの鋭利でパワフルな打鍵もさることながら、ラヴェルのクリスタリックで繊細な音楽性の再現も鮮やかだ。

3面折りたたみのデジパックに2枚のCDと抜き出し可能なライナー・ノーツが挿入されていて、そこに詳細な録音データと共にグレゴール・ヴィルメスの『マルタ・アルゲリッチ、若き雌ライオン』という興味深いエッセイと多数のスナップ写真が掲載されている。

これらはこの時期の彼女の音楽活動を知る上で非常に示唆的である。

ちなみにこのアルバムのレパートリーは、アルゲリッチが16歳で優勝した1957年のブゾーニ及びジュネーヴのふたつの国際音楽コンクールの演奏プログラムとして準備されたようで、この時期彼女はウィーンでフリードリッヒ・グルダに師事していた。

その後1965年にはショパン・コンクールで第1位を獲得するが、このラジオ放送用音源はそれと相前後して収録されている。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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