2016年05月22日
ピエール・モントゥー晩年のユニヴァーサル音源20枚
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ユニヴァーサル・イタリーからの新譜になり、ピエール・モントゥーのデッカ、フィリップス、ウェストミンスターの音源を20枚のCDにまとめたもの。
モントゥーは80歳を過ぎてからベートーヴェンの交響曲全曲を始めとするかなり充実したレパートリーをデッカとフィリップスに録音している。
協演のオーケストラは彼が1961年から64年に亡くなるまで首席指揮者だったロンドン交響楽団の他にウィーン・フィル、コンセルトヘボウ及びパリ音楽院管弦楽団で、最も古い1956年の『火の鳥』と『ペトルーシュカ』も歴としたステレオ録音なので臨場感にも不足しない鮮明な音質で鑑賞できるのが嬉しい。
特に後者は若き日のジュリアス・カッチェンがピアノ・パートを弾いていて、夭折した彼の貴重な記録でもある。
2014年にRCAからモントゥーのコンプリート・セットがリリースされたが、このユニヴァーサル音源はその補巻として彼の晩年の至芸を堪能させてくれる。
ただしこちらはコンプリートではなく、例えば1958年のウィーン・フィルとのベルリオーズの『幻想』やメンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』などは含まれていない。
尚ウィーン・ゾフィエンザールでの『幻想』のセッション録音は現在オーストラリア・エロクエンスのレギュラー盤かプラガ・ディジタルスからのSACD盤での選択肢がある。
モントゥーはアメリカに活動の本拠地を移すまで、ディアギレフ率いるバレエ・リュスの専属指揮者だったことから、ストラヴィンスキーの『春の祭典』『ペトルーシュカ』ラヴェルの『ダフニスとクロエ』を始めとする多くの創作バレエの初演を振った。
言ってみればこうした叩き上げの豊富な経験によって彼の新時代の音楽に対する極めて洗練された感性とそれを指揮する極意が培われたに違いない。
中でも『春祭』は当時のパリ上流階級を中心とする観客のブーイングの嵐と劇場の大混乱によって上演は中断せざるを得なかったが、モントゥーの予言どおりその後この曲はバレエのみならずオーケストラのレパートリーとしても完全に定着した。
当時としては前衛以外の何物でもなかった最先端の音楽に取り組み、その芸術的価値を信じて疑わなかった彼の先見の明には脱帽せざるを得ない。
ここに長いキャリアを積んだ晩年のモントゥーによるストラヴィンスキーの3大バレエがパリ音楽院管弦楽団との演奏で収録されているのは象徴的だ。
34ページほどのライナー・ノーツには収録曲の詳細なデータ及びラジオのクラシック番組でお馴染みのルーカ・チャンマルーギのエッセイが英、伊語で掲載されている。
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