2016年05月27日

ホッター&ムーアのシューベルト:歌曲集「白鳥の歌」、他


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ヨーロッパには、白鳥は死ぬ前に一声だけ美しい鳴き声をあげる、という言い伝えがあるが、それに因んで作曲家の亡くなる直前に書かれた作品を倏鯆擦硫劉瓩噺討鵑任い襦

シューベルトのこの歌曲集も文字通り彼の死の年に書かれた歌曲14曲を集めたもので、没後ハスリンガーによってまとめられ、《白鳥の歌》のタイトルで出版された。

深々としたバスの声で歌われる《白鳥の歌》は珍しいが、その代表格であり、かけがえのない名演奏と思えるのは20世紀ドイツを代表する偉大なバス・バリトン、ハンス・ホッターによるこの録音だ。

この歌曲集には、以前から名盤の数が多く、どれが特によいのか、多くの人にはそれぞれの支持盤があり、意見はかまびすしい。

筆者自身、愛聴している盤はいくつかあるが、なかでもとりわけしみじみとした情感をたたえ、深い味わいを感じさせる演奏として、まずこのホッター&ムーア盤をあげたいと思う。

この歌曲集を全曲歌うには、軽妙さから重苦しい沈鬱さまでの幅広い表現を必要とするので、概してバリトンが歌った時に良い結果が出るようで、典型的なテノールや重いバスには荷が重すぎるようだが、バスというよりはバス・バリトンとして歌っていたホッターの意外に軽やかな表現が忘れられない。

ホッターが、日本でよく知られるようになったのが、名伴奏者ジェラルド・ムーアとのこの《白鳥の歌》(1954年録音)あたりからだったという。

当時のホッターは45歳の円熟期にあり、シューベルト最晩年の深い抒情を見事に表出した名演で、若くして老いたシューベルトの晩年の人生観から晴朗な諦観を汲み出し、そのしみじみとした味わいは、聴き手の心を包み込むような深い慈愛に満ちている。

〈セレナーデ〉の深さ、〈アトラス〉の迫力と孤独…、このような歌は技巧から生まれるものではなく、歌い手の内面から投影されて現れるものだ。

しかもその内面のなんと穏やかで包容力のあることか! 耳を傾けていると心が慰められる。

シューベルトは《水車屋》や《冬の旅》、それにこの《白鳥の歌》を通して牋Δ良垪澂瓩鯆謬罎靴拭

《冬の旅》の荒涼とした冬景色、《白鳥の歌》の都会での孤独はまさにその譬えであり、若くして死と向き合わねばならなかった作曲家の晩年の人生観を映している。

それは深い孤独のなかから生まれた晴朗な諦観と言ってもよいものだが、その核心にもっとも深くふれているのがこのホッター盤で、シューベルトの最晩年の心象風景をこれほど的確にとらえ、滋味ゆたかで慰撫に満ちた演奏もまれだ。

ホッターの《白鳥の歌》は、この深い孤独感を身に迫る凄味で歌い出していて、そのいぶし銀のような声と深い人生観照は、作曲家が陥っていた孤独感に一体化するほど親密にふれている。

確かに孤独は恐ろしいが、それから逃れようとしても、それはつねについてまわる。

それならむしろ孤独を凝視し、それに徹してみてはどうか。

リルケは「飲むのが苦しければ、ぶどう酒そのものとなれ」と歌った。

そのときその苦みは身体をあたため、それを友とするようになるだろう。

真の孤独を知った者だけが、真に人間を愛せる。

この演奏からひびき出ているのはその意味だ。

孤独の苦しみのなかでは、かすかな希望も見失われがちだが、ホッターは忍耐強く、ヒューマンな懐の深い包容力を示し、必ずや出口は見つかると励ましてくる。

それはおそらく孤独の極にあったシューベルト自身も勇気づけられるほどの共感力だ。

これが45歳の演奏なのだから、ホッターはなんと成熟した演奏家だったのだろう!

ムーアのピアノ伴奏にも配慮が行き届き、力がこもっている。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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