2016年06月05日
レイチェル・ブラウンのバッハ:フルート・ソナタ集
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英国のベテラン女流トラヴェルソ奏者レイチェル・ブラウンが初めてリリースしたバッハのフルート・ソナタ集。
これまで彼女のレパートリーはくまなく聴いてきたが、バッハの無伴奏フルート・パルティータイ短調を含むフルート・ソナタ・アルバムは初めての企画で、円熟期を迎え満を持しての演奏ということになる。
収録曲目は、真作4曲のフルート・ソナタ、無伴奏フルート・パルティータ、声楽作品からオブリガート・フルート付部分のピックアップが6曲、そしてブラウン自身がトラヴェルソ用にアレンジした協奏曲を含む編曲物2曲という内訳になる。
ブラウンの若い頃は男性顔負けの大胆でエネルギッシュな吹込みによる輪郭が明瞭で個性的な表現が魅力だったが、前回のテレマンの『無伴奏ファンタジー』でも明らかなように、ここ数年ではよりデリケートでインティメイトな芸風に変わってきた。
ここではまたバッハの意図する音楽にかなり忠実な再現が行われていて、この曲集では偽作とされる作品に関しては除外している。
無伴奏パルティータでは第1楽章アルマンドの最後の音がトラヴェルソの最高音a'''で、通常多くの奏者はこの音の突出を避けるためにリピート後に1回だけ演奏するが、ブラウンは1回目はメゾ・フォルテ、2回目はフォルテという具合にダイナミクスに変化をつけて楽譜通り繰り返している。
またサラバンドに代表される各楽章のリピート部分は当時の演奏習慣に従って、細やかな装飾音で飾った華麗なヴァリエーションに仕上げているのが特徴だ。
4曲のソナタの中でも最も充実した演奏がロ短調BWV1030で、バッハがチェンバロの右手パートも総て書き入れた実質3声部が織り成す精妙な対位法作品だが、ブラウンは気負いのない演奏の中にもトラヴェルソで表現し得る高い音楽性を感知させている。
楽章ごとの性格の違いもくっきり描かれていて、終楽章のフーガからジーグに至る部分ではテンポを速めて緊張感を高めながら曲を締めくくっている。
設定されたピッチは低いが、チェンバロとの音色のバランスも良く取れている。
今回の録音に使われたトラヴェルソは1725年製のシェーラー・モデル及び1720年製のI.H.ロッテンブルグ・モデルのそれぞれワン・キー・タイプで、ピッチはどちらも現代よりほぼ長二度低いa'=392Hz。
尚34ページほどのライナー・ノーツにはそれぞれの曲目に関するブラウンのトラヴェルソ奏者としての興味深いコメントと、カンタータで歌われるアリアの英語対訳及び演奏者全員の写真入略歴が掲載されている。
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