2016年06月13日

シェリング&ヘブラーのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集


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シェリングとしては2回目の録音になるが、1回目のルービンシュタインと組んだヴァイオリン・ソナタ集はRCAに録音した第5番『春』、第8番及び第9番『クロイツェル』の3曲のみで、音質の面で劣っていることは否めないが演奏の質の高さからすれば彼らが全集を完成させなかったのが惜しまれる。

シェリングは生涯に亘ってコンサートのプログラムからベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを外すことがなかった。

それだけに彼が長いキャリアを通じて常に磨き上げてきた、決して借り物ではない徹底した解釈と独自に開拓した奏法を、晩年イングリット・ヘブラーとの唯一の全曲盤で世に問うことになった。

1970年代後半のシェリングは、流石にルービンシュタインの胸を借りた若い頃の覇気はなくなり、テンポも比較的ゆったりと構えているが、緊張感が失われているわけではない。

むしろマイナス面を微塵も出さない几帳面さと格調の高さでは、ひとつの模範的なアンサンブルではないだろうか。

シェリングは音楽から多彩な可能性を引き出すのではなく、よりシンプルに収斂していく方向性を持っている。

だから『春』においても甘美な音色で魅了するタイプではないが、ベートーヴェンの音楽構成を真摯に辿りながら彫りの深い造形と端正な様式感を抑制された表現で感知させていると言えるだろう。

他に逃げ道を探すことのない正攻法の音楽作りには当然ながらそれだけの厳しさがあって、鑑賞する側にもそれを受け入れるだけの準備が要求される。

個人的には彼らのポリシーが最良に発揮されているのが第10番ト長調だと思うが、例えば『クロイツェル』でもことさら大曲ぶって演奏することはなく、また往々にして戦闘的になりがちな急速部分では協調性を決して失わないように注意深く合わせて、自然に滲み出てくるような2人の円熟期の至芸を披露している。

しかもウィーンのピアニスト、ヘブラーと組むことによって、その厳格さが程良く中和されバランスのとれたエレガントな雰囲気が醸し出されていることも事実だ。

勿論ヘブラーの変化に富んだ細やかなサポートも聴き逃せないが、彼女も主張すべきところでは堂々たる大家の風格をみせている。

1978年から翌79年にかけてスイスで収録されたもので、ロゴはデッカになっているが、フィリップス音源のキレの良いシャープな音質と録音時の音量レベルが高いのが特徴だ。

以前リリースされた全曲集では10曲のヴァイオリン・ソナタの他にハイティンク指揮、コンセルトヘボウ管弦楽団によるベートーヴェンのヴァイオリンとオーケストラのための『ロマンス』ヘ長調及び同ト長調をカップリングしていたが、今回のセットではこの2曲が省かれている。

いずれにしても廃盤になって久しかったCDの廉価盤化での復活を歓迎したい。

フィリップスにはシェリング、ヘブラーの顔合わせでモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集も都合4枚分の音源があり、こちらもまとまったリイシュー盤を期待したい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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