2022年04月04日
マリア=ジョアン・ピリスがエラートからドイツ・グラモフォンに移籍した後の、デュメイとの協演を中心にアンサンブルの録音をまとめた12枚組BOX
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マリア=ジョアン・ピリスがエラートからドイツ・グラモフォンに移籍した後の、アンサンブルの録音をまとめた12枚組BOX。
彼女がこの頃意欲的に取り組んだ他の演奏家との多彩な能力を示した興味深い演奏になる。
このセットのうち9枚までがヴァイオリニスト、オーギュスタン・デュメイとの協演でベートーヴェン及びブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲を始めとするゲルマン系作曲家の作品を中心に収録している。
同時期彼らは集中的なアンサンブルを行っていて、ラテン系の演奏家2人がドイツ物にフレッシュな感性で対応したデュエットに仕上がっている。
デュメイは官能的な表現を得意としているが、ここでも彼の美しい音色を活かして流麗に歌うカンタービレは、フランコ=ベルギー派を受け継ぐ典型的なヴァイオリン奏法だ。
それ故このセットの白眉はCD11のフランク、ラヴェル、ドビュッシーを収めたフランスの作曲家の作品集である。
感性を共有するピリスの繊細かつ情熱的な伴奏に、水を得た魚のように大胆で、しかも妖艶な雰囲気を漂わせた魅惑的な演奏を披露している。
彼らの音楽作りには特有の抑揚があって、ベートーヴェンに関しては哲学的な演奏ではないにしても、より自由に解き放たれた演奏と言うことができるだろう。
ドイツ物ではむしろ憂愁に包まれた歌謡性を持ったブラームスのヴァイオリン・ソナタの方が両者には合っているかも知れない。
その意味でCD5でジャン・ワンが入るブラームスのピアノ三重奏曲のドラマティックな展開やCD9で更にヴァイオリンのルノー・カピュソン、ヴィオラのジェラール・コセが加わるシューマンのピアノ五重奏曲は、彼らの濃厚なロマンティシズムの表出で秀逸だ。
しかし一方でCD8のモーツァルトの3曲のピアノ三重奏曲も均整のとれた古典的な演奏が模範的だ。
意外にもCD6のグリーグの3曲のヴァイオリン・ソナタが、柔軟に捉えた北欧の舞曲や抒情を湛えた映像的な描写で優れている。
尚最後はチェロのアントニオ・メネセスとのウィグモア・ホールでのジョイント・コンサート・ライヴで、これも気の利いたプログラムによる捨て難い1枚だ。
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