2016年06月25日
カルロ=マリア・ジュリー二/ザ・ロンドン・イヤーズ
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一昨年2014年5月のカルロ=マリア・ジュリー二の生誕100周年記念として3巻に分けてリリースされたアルバムのひとつで、ロンドンを拠点に行われたEMI音源のセッションを17枚のCDにまとめてある。
1956年から1976年にかけての録音なので理想的な音質とは言えないが、これまでのリマスタリングによってかなり良好な音響が再現されている。
先にユニヴァーサル・イタリーから出たグラモフォン盤ではジュリーニ円熟期の至芸を堪能できるが、このセットでは彼がロンドンのオーケストラを振った壮年期特有のバイタリティーと極めて理知的にコントロールされたカンタービレが傑出した演奏だ。
オーケストラはフィルハーモニア管弦楽団、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団など首都のオーケストラをフルに活用した、まさに「ザ・ロンドン・イヤーズ」のタイトルに相応しい優れた内容を誇っている。
中でもこの時期ジュリーニが最も高く評価していたのが改名以前のフィルハーモニア管弦楽団で、このアルバムでも大半は彼らとの協演で占められている。
いずれにしても同じ楽団の首席指揮者や音楽監督の地位に長く留まらず、常に一匹狼的な芸術活動を続けた彼のワーク・スタイルは生涯を通じて徹底したものであった。
そこには彼が経年による澱や馴れ合いを嫌った仕事に対する厳格な姿勢と、家族への配慮など人間性を最優先する情愛豊かな側面も見出される。
それは彼の音楽の精巧なディティールと対照的に温かい人間愛に充たされた安らぎに通じるものがある。
演奏曲目を見るとミラノ・スカラ座出身だった当時のイタリア人指揮者としては、彼が既に多彩なレパートリーを開拓していたことが理解できるだろう。
後年彼はむしろレパートリーを限定していく方向に向かうが、アバドが世に出るまではジュリーニがトスカニーニ、デ・サーバタ、カンテッリに続く、オペラ以外のオーケストラル・ワークや声楽曲でも世界に通用する殆んど唯一のイタリア人だったことも象徴的だ。
しかしやはりオペラ畑で鍛えた腕を持っていることがその指揮振りにもよく表れていて、鋭敏な感性でオーケストラを導くカリスマ的統率力と同時に溢れるような歌心を内包した自在な音楽観は彼独自のものだ。
彼がワーグナーやリヒャルト・シュトラウスを振らなかったのは惜しまれるが、この17枚にはお国物のボッケリーニ、ロッシーニ、ヴェルディの他にグラモフォン盤には含まれていない作曲家ストラヴィンスキー、ファリャ、ブリテンなどの作品がいずれもオリジナリティーに富んだ鮮烈な演奏で収録されている。
尚最後の1枚はボーナスCDで、彼の人生とそのキャリアについて2003年にミラノで行われたインタビューに答える形でジュリーニが英語でコメントしている。
8トラック76分に亘る会話のバックには、その話題に因んだ録音が使われていて興味深い。
ライナー・ノーツは27ページで曲目データ及び彼のロンドン時代のレコーディングについて英、独、仏語の解説付。
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