2016年07月09日

ムーティのベッリーニ:歌劇『清教徒』


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リッカルド・ムーティの虚飾を排した原典主義が貫かれた、ベルカント・オペラの中でも最も美しい作品のひとつで、主役級の3人、クラウス、カバリエ、マヌグェッラの歌唱が指揮者の徹底した指示に良く調和したセッションだ。

ムーティは過去の歌手や指揮者達によってスコアに書き加えられた、見せ場を作るための伝統的なカデンツァや華美な装飾音を躊躇することなく取り除き、ベッリーニによって作曲されたとおりの音楽を再現しようと試みた。

それだけに全体がすっきりして、かえってこのオペラの特質が良く見えている。

しかし総てを記譜されたとおりの原調で歌うとなると、主役アルトゥーロにはテノール泣かせの超高音がこれでもかというように続出して、誰にでも挑戦できる役柄ではない。

アルフレード・クラウスは当時既に52歳だったと記憶しているが、その高貴でスタイリッシュな歌唱を崩すことなく、驚異的なテクニックで目の醒めるようなcis'''やd'''の高音を堪能させてくれる。

唯一彼が避けたのは終幕のアリアに出てくるf'''で、彼はdes'''を2回繰り返すに留めているがそれは妥当な選択だろう。

この音を歌ったのは、古いセッションではニコライ・ゲッダが出しているが、どちらもこの音の部分が強調されてしまい、曲のリリカルなスタイルからすると必然性に欠けるように思える。

ベッリーニのオーケストレーションは極めて簡潔で、声の魅力を極限まで活かすということに主眼が置かれていて、それ以外は劇中の雰囲気を盛り上げるための効果的なアクセントに過ぎないが、逆に言えばそれだけ歌詞とメロディーを密接に結び付けて、アリアや重唱にオペラの全生命を賭けた作品として仕上げた。

ムーティの傑出している点は、楽譜に託された歌詞と音楽の整合性や進行する物語への音楽的変化を注意深く捉えて、ベッリーニの書法を忠実に再現するだけでなく、そこに瑞々しいカンタービレを横溢させていることである。

勿論ムーティの手兵だったフィルハーモニア管弦楽団のオペラ演奏への理解が功を奏していることも注目される。

こうしたアプローチがしばしば指摘される台本の不自然さをカバーして、この作品の芸術性を高めているのだろう。

このセッションは、その音楽的意味合いの違いはあるにせよ1953年のトゥリオ・セラフィン指揮、カラス、ディ・ステファノの協演したEMI盤と並ぶべき名演としてお薦めしたい。

セラフィン盤は伝統的なベルカントの饗宴を実践した演奏であり、一方ムーティのそれは新時代のリニューアルされたイタリア・オペラの蘇生ともいえるのではないだろうか。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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