2016年07月23日
プラハのヴォルフガング・サヴァリッシュ
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チェコ・フィルハーモニー管弦楽団としばしば共演を重ね、団員達からもチェコの音楽作品の最高の理解者の一人として信頼の厚かったヴォルフガング・サヴァリッシュが、主としてプラハのラジオ放送用に遺した未発表客演ライヴ集で、2013年の2月に亡くなった彼への追悼盤のひとつになる。
5枚のCD総てが1970年から87年までのライヴ音源で、拍手も入っているが客席の雑音は殆んどなく、またアナログ、デジタルの両方式が混在しているがリマスタリングの効果もあって音質は極めて良好だ。
一通り聴いてみたが、1970年代の初期の録音では響きがややデッドで、ごく一部に僅かなノイズが聞こえる程度で破綻のない安定した録音状態なので鑑賞に全く不都合はない。
ライナー・ノーツにも書かれているが、サヴァリッシュは稽古の時でも決して声を荒げたり、激しいジェスチャーでオーケストラを統率するようなことはなかったようだ。
一方で彼の音楽は理知的だが神経質にならず一貫した緊張感と滾るような情熱、そしてオリジナリティーにも不足していない。
そこには黙っていても団員を率いていくだけの作品に対する深い見識と高度な指揮法があった筈である。
特に後半の2枚はチェコ・フィルが他のオーケストラには譲れないお国物のレパートリーで、ヤナーチェク、マルティヌー、ドヴォルザークとエベンの作品が採り上げられている。
中でもヤナーチェクの『グラゴル・ミサ』及びマルティヌーの『戦場ミサ』は民族的な士気を高揚させる曲だけあって、オーケストラの燃焼度が高いだけでなく、声楽曲に卓越した能力を発揮したサヴァリッシュの面目躍如たる演奏だ。
『戦場ミサ』での男声合唱の水準の高さはサヴァリッシュの実力を見せつけている。
惜しむらくは『グラゴル・ミサ』でのソロを歌う歌手達が若干非力なことだろう。
最後に置かれたペトル・エベンの『プラハ・ノクターン』はこの都市で『ドン・ジョヴァンニ』を初演したモーツァルトに捧げられた曲で、大編成のオーケストラで演奏される現代のプラハへのオマージュでもある。
マルティヌーの交響曲第4番でも顕著だが、こうした現代音楽にみせるサヴァリッシュの繊細で緻密な音楽設計と音響への要求に応じて機動力を駆使するオーケストラの自在さも見事である。
ライナー・ノーツは34ページで彼のチェコ・フィルとのキャリアと短いインタビューが英、独、仏、チェコ語で掲載されているが、そこには日本での体験として日本人のクラシック音楽への感受性についても興味深いコメントがある。
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