2016年08月17日
ポリーニのシューベルト:《さすらい人幻想曲》、シューマン:幻想曲
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ここに収録されたシューベルトの『さすらい人幻想曲』及びシューマンの『幻想曲ハ長調』の2曲が最初にSHM−CD化されたのは2008年で、限定盤だったために既にプレミアム価格で取引されていた。
今回のリイシューに当たって低価格化されたことを歓迎したい。
今年になってからグラモフォンのアナログ時代のスタンダード・ナンバーがSHM−CDによって大挙放出され、ポリーニの演奏もソロ、協奏曲共に代表的な音源が復活している。
1973年の録音だが当時のグラモフォンのリマスタリング技術が初のCD化に際して完全に活かされていたとは言えない。
これら2曲を初出のレギュラー・フォーマットのCDと聴き比べると、旧盤はピアノの音質が若干痩せていて、高音の伸びも今ひとつな上に音色の瑞々しさにも欠けている。
SHM−CDによる音質のグレード・アップはリマスタリングとは直接関連がないようだが、注意して聴いているとその差は歴然としていて、ポリーニの持ち味がより忠実に再現されるようになったことを評価したい。
例えば彼はペダルを充分に踏んで豊かな音響を創造しているが音の濁りは皆無で、弱音でも脆弱にならず輝きを保った響きが得られている。
両曲とも古典的なピアノ曲の様式からはいくらか逸脱した奇想的なファンタジーに富んだ作品で、中世の騎士道小説を読むような硬派のロマンティシズムに支えられている。
テクニック的にも難解を極めた曲として知られているが、ここでもポリーニは一切の曖昧さを残さず、総てを音から音への力学によって明確に弾き切っている。
シューベルトの『さすらい人幻想曲』のフーガの明晰さと力強さ、そしてフランツ・リストに献呈されたシューマンの『幻想曲ハ長調』では感傷的な表現を避けた、あくまでも明瞭な響きによるスケールの大きいシンフォニックな奏法は彼ならではのものだ。
この作品の第1楽章終結部に現われるベートーヴェンの『遥かなる恋人に寄す』のテーマはピュアな音の結晶として鳴り響いている。
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