2016年08月28日
ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルのシベリウス:交響曲第3番、第7番、他[SACD]
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エフゲニー・ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルのコンビによる演奏集のSACD化を続けているプラガ・ディジタルスからの新譜はシベリウスの作品集で、交響曲第3番、交響詩『四つの伝説』より「トゥオネラの白鳥」、交響曲第7番及びドビュッシーの『夜想曲』から「雲」と「祭」を収録している。
交響曲第3番は1963年10月27日のラジオ放送用ライヴからの音源で、近年になってサンクト・ペテルブルク放送局で発見されたマスター・テープはモノラル録音だが、こちらは同音源を擬似ステレオ化したものからのDSDリマスタリングになる。
ちなみに彼らはその前日にレニングラードでこの曲のソヴィエト連邦初演を行っている。
音質は時代相応以上に良好で音場は拡がっているが音響が平面的になった印象はなく、むしろオリジナルのモノラル録音より色彩感が増して臨場感にも不足していない。
「トゥオネラの白鳥」はステレオ録音で、近寄りがたいほどの峻厳な雰囲気と凍てついた死の河を漂う孤高の白鳥をイメージさせる表現が秀逸だ。
ドビュッシーは擬似ステレオ化されているが音質はこの曲集の中では恵まれていない。
「雲」はその幻想性で優れた演奏であることに疑いはないが、ムラヴィンスキーの厳格さがこうしたレパートリーでは律儀過ぎるところがあって「祭」での中間部の高揚がやや強引な力技に感じてしまう。
一方シベリウスの交響曲第7番は良好なステレオ・ライヴ録音で、彼の常套手段になる第1、第2ヴァイオリンが向き合う両翼型の編成が繰り広げるステレオ効果も随所で聴き取ることができるし、この曲を簡潔にしかも効果的にまとめあげたムラヴィンスキーの力量は流石だ。
また彼は曲想の変化に応じてオーケストラにかなり細かい指示を出していて、民族的な熱狂とは異なった構造的な力学からの精緻な解釈、つまり音響のダイナミクスとテンポの対比を駆使してシベリウスのオーケストレーションの醍醐味を引き出しているのが聴きどころだろう。
時として咆哮するブラス・セクションと弦楽部のバランスは巧妙に計算されている。
ムラヴィンスキーの音源につきまとう録音データの問題だが、交響曲第7番に関してはこれまでにリリースされた同曲の音源は1965年2月23日のモスクワ・ライヴ及び1977年の東京ライヴのみだと思っていたがライナー・ノーツでは録音データが1965年10月29日でレニングラード・ライヴと記されているだけでなく、ご丁寧にレコーディング・エンジニア、アレクサンダー・グロスマンの名前も明記されている。
プラガの録音データには翻弄されることがあるので断定はしかねるが、記載に間違いがなければ第7番には3種類の録音が遺されていたことになる。
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