2016年09月01日

マッケラス&ウィーン・フィルのヤナーチェク総集編


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オーストリアの指揮者、チャールズ・マッケラス(Sir Charles Mackerras 1925-2010)が生涯に渡ってその作品の普及に努めた作曲家の1人が、モラヴィアの作曲家、レオシュ・ヤナーチェク(Leos Janacek 1854-1928)である。

そんなマッケラスのヤナーチェク録音の集大成と言えるのが、1976年から1982年にDECCAレーベルに行なったウィーン・フィルとの一連の録音である。

本アルバムは、それらを1つに収めたBox-setとなっており、収録内容は以下の通り。

1) 歌劇『イェヌーファ』(第3幕の序曲「嫉妬」付) A: エヴァ・ランドヴァー S: エリザベート・ゼーダーシュトレーム T: ペーター・ドヴォルスキー 1982年録音 
2) 歌劇『利口な牝狐の物語』(組曲「利口な牝狐の物語」抜粋付) S: ルチア・ポップ Bs: ダリボル・イェドゥリチカ A: エヴァ・ランドヴァー 1981年録音
3) 歌劇『死者の家から』 Bs ダリボル・イェドリチカ Br: ヴァーツラフ・ズィーテク S: ヤロスラヴァ・ヤンスカー 1980年録音
4) 歌劇『マクロプロス事件』 S: エリザベート・ゼーダーシュトレーム T: ペーター・ドヴォルスキー T: ウラディーミル・クレイチーク 1978年録音
5) 歌劇『カーチャ・カバノヴァー』 S: エリザベート・ゼーダーシュトレーム T: ペーター・ドヴォルスキー A: ナジェジュダ・クニプロヴァー 1976年録音
6) シンフォニエッタ 1980年録音
7) 狂詩曲『タラス・ブーリバ』 1980年録音

以前のレビューにも記したことであるが、独特の語法を持つヤナーチェクの音楽は実に面白く魅力的だ。

自由だが法則があり、ポリリズムだが脈があり、メロディアスではないが簡明である。

そんなヤナーチェクらしさを存分に堪能できるのが、全部で11作あるオペラ(前後2部からなる『ブロウチェク氏の旅行』を2つと数えると)である。

オペラの場合、中でも特徴的なのが「発話旋律」と称されるもので、チェコ語の微妙な抑揚に合わせて旋律線を描いた朗唱風の書法で、そのため、演じることが可能な歌手が極端に限定される。

そのため、上演機会もきわめて少ないのだが、マッケラスは中で5つの代表作にすばらしい録音を遺したことになり、DECCAの高品質録音と相俟って貴重きわまりないものだ。

ヤナーチェクのオペラは題材も面白く、『利口な牝狐の物語』は動物が多く登場する童話的設定を持ちながら、多層な哲学を描き出しているし、『死者の家から』はドストエフスキー(Feodor Dostoyevsky 1821-1881)の原作により、シベリアの流刑地での囚人の様子を描いたもので、登場人物はほとんど男性という異色作、また『マクロプロス事件』は年をとらない女優の都市伝説的ストーリー。

どの作品も、素材、音楽、物語など様々な面でこの上なく「芸術的」で、他では得難い固有の価値を持っていると思うが、中でも『利口な牝狐の物語』の自然讃歌は、善でも悪でもない生死による流転を描ききった感があり、超越した世界観を抱合している。

そして『イェヌーファ』は所謂オペラ的分かりやすさという点では、筆頭ということになるだろう。

マッケラスの指揮は、ヤナーチェクの作品を数多く演奏するとともに、楽譜校訂を行ってきたこともあって、厳格なスコアリーディングに基づく楽曲の心眼に踏み込んでいくような彫りの深いものであり、加えてこの指揮者ならではの独特の格調の高さが全体を支配している。

そして、ウィーン・フィルによる豊穣な極上の美演が、本演奏全体に独特の潤いと豊かな情感を付加しているのを忘れてはならない。

完成された録音が、ヤナーチェクのオペラ全部ではないのが残念だが、それでも5つまでこのレベルの録音が行われたのは、きわめて有意義なことだったに相違なく、偉大な録音芸術のセットと言って過言ではないだろう。

歌手陣で注目したいのは、近年亡くなったスウェーデンのソプラノ歌手、エリザベート・ゼーダーシュトレーム(Elisabeth Anna Soderstrom 1927-2009)。

多彩な言語の歌唱が可能で、歌曲、オペラなどあらゆるジャンルで縦横な活躍をした彼女であるが、グラモフォン誌におけるジョン・ワラック氏(John Warrack)による「無限とも思える微細なタッチと慎重な歌いまわしで、ドラマにおける登場人物のキャラクタを描ききっている」との批評は、彼女がヤナーチェクの歌劇『カーチャ・カバノヴァー』でカーチャを演じた際のものだ。

そのハイレベルな万能ぶりはまさしく当盤で堪能できるだろう。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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