2016年09月13日
オイストラフ&ベルリン・フィルのモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
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ダヴィッド・オイストラフは晩年にヨーロッパを代表するオーケストラを自ら指揮した演奏を少なからず録音していて、この3枚組もベルリン・フィルを弾き振りしたモーツァルトの協奏曲集になる。
真作とされる5曲のヴァイオリン協奏曲とヴィオラが加わる協奏交響曲変ホ長調及びコンチェルトーネハ長調、更に断片として遺されているロンド2曲とアダージョホ長調を収録している。
つまりモーツァルトが作曲したオーケストラ付のソロ・ヴァイオリンのための作品全集ということになる。
それらにはオイストラフ円熟期の端正だがバイタリティーに溢れた音楽観が示されていると同時に、彼の晩年の精力的な演奏活動の記録でもある。
ちなみに彼の最晩年のセッションを飾っているのもパウル・バドゥラ=スコダと組んだモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集で、オイストラフが音楽の故郷としてモーツァルトに帰っていたことが想像される。
それだけに奇を衒ったところのないシンプルな解釈の中に、磨き上げられた音楽性とテクニックが光っていて、モーツァルト・ファンにとっても模範的なサンプルとして欠かせない曲集だろう。
ベルリン・フィルと刺激しあい、協調しあった新鮮な演奏で、名高い第3番から第5番はもちろんのこと、初期の第1番、第2番も豊饒そのもの。
ベルリン・フィルのようにアンサンブルにも超一流の腕を持つオーケストラは、指揮者が不在でも破綻なく高水準の合奏をすることが可能だが、モーツァルトではむしろ抑制を利かせることが要求される。
そのあたりのオイストラフのサジェスチョンを心得たダイナミズムも巧妙だが、個人的にはもう少し小ぢんまりまとめても良かったと思う。
しかしそれぞれの主題提示部での精彩に富んだ生き生きとした表現や、第3番の緩徐楽章でのヴァイオリンのカンタービレを支える抒情の豊かさも聴きどころのひとつだ。
協奏交響曲のヴィオラ・パート及びコンチェルトーネの第2ヴァイオリンは彼の息子イーゴリ・オイストラフが担当していて、バランスのとれたデュエットを披露しているが、正直言って父親の器量には一歩も二歩も譲っている。
尚ここに収められたモーツァルトのヴァイオリンを含む総ての協奏曲とオーケストラ伴奏付のソロ・ヴァイオリンのための小品は、以前にEMIからリリースされたオイストラフのコンプリート録音集にも全曲含まれていて、実際にはその全集の中からCD9−11の3枚をピックアップしたのがこのセットになる。
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