2016年09月19日
リヒテルのスポレート・ライヴ 1967
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1960年に45歳でようやく西側諸国でのトゥルネーを許可されたリヒテルの演奏活動は、その後欧米で破竹の勢いで進められたが、このライヴでも既に円熟期に向かっていた彼の熟考された音楽作りと幅広い表現力が堪能できる。
最初のハイドンでは洗練された手際の良い軽快なソナタが実に巧妙で、彼はモーツァルトよりどちらかと言えばハイドンを得意としてレコーディングやコンサートのプログラムにしばしば取り入れたが、毎回異なった曲目を選んで演奏しているところが如何にも彼らしい。
剛毅なシューマンの2曲の『ノヴェレッテ』には彼の逞しさが、そしてショパンの『バラードト短調』のコーダのたたみかけるようなアッチェレランドにはリヒテルのオリジナリティーが明確に示されている。
またドビュッシーの『前奏曲集』で聴かせる溢れるほどのニュアンスの豊かさとピアノの音色への可能性の追究という面でも、後の巨匠のシューベルトやバッハにあらわれる音楽性を既に垣間見せていて興味深い。
ライナー・ノーツによれば、この録音はリサイタルの翌年1968年にヴォックス・ターナバウト・レーベルから2枚組のLPで登場したが、CD化に当たってオリジナル・テープは使用可能な状態ではなく、ヴォックス所蔵の第2音源から修復及びデジタル・リマスタリングされたようだ。
しかし音質は驚くほど良好で、この手のライヴ録音としては最良の状態が復元されている。
臨場感も申し分なく、リヒテルの入場、拍手、演奏、そして喝采の総ての状況がつぶさに把握できる。
またピアノのタッチも生々しく聴き取れるのが特徴だ。
リリース元のミュージカル・コンセプツ社は英マンチェスターのアルト・レーベルから一連のリヒテルの録音をリイシューしているが、この音源に関してはミュージカル・コンセプツの名称を使い、裏面にVoxのロゴをつけている。
イタリアの中部、ウンブリア州スポレートの町で開催される『2つの世界のフェスティヴァル』と題された行事は、1958年に作曲家ジャン=カルロ・メノッティによって企画されたヨーロッパとアメリカの2つの世界の芸術交流を目的とした祭典で、彼の死後も引き継がれて現在に至っている。
厳密には音楽祭ではなく、演劇やバレエ、美術などの分野からの参加も盛んで、毎年気候の良い6月から7月にかけての3週間に2つの劇場とローマ時代の野外劇場などを使って世界的な水準の演目と新しい芸術的な試みが披露される。
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