2016年09月24日

ブレンデル&アバドのシューマン:ピアノ協奏曲/ウェーバー:コンツェルトシュトゥック


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



巨匠への道を歩んでいたブレンデルとアバドとの初顔合わせという話題盤であったが、2人の個性がよく結びつき、演奏に大きな風格を与えている。

バッハから20世紀の作品まで幅広いレパートリーをもつブレンデルだが、意外なことにそれまでシューマンはほとんど取り上げていなかった。

そうしたブレンデルが1980年代からシューマンのピアノ曲を次々と録音するようになったのも、この演奏がひとつのきっかけになったのではないだろうか。

そんなことを考えたくなるのも、この演奏がとても瑞々しいロマンをたたえているからである。

ブレンデルは1997年にこの協奏曲をザンデルリンクと再録音しており、それも魅力的な演奏で甲乙つけ難いので好みを分けそうだが、正攻法の演奏を細部まで彫り深く、より引き締まった感覚で展開しているのは壮年期の旧盤だろう。

作品に正面から向き合って巨細に磨き抜かれた表現の充実、さらに繊細でニュアンス美しい表現を強い集中力と豊かな感情の起伏をもって硬軟幅広く、かつのびやかにスケール大きく織りなしたこの演奏は、いっそう充実している。

ブレンデルは、情緒に流れると締まりがなくなるこの曲に、終始くっきりとした輪郭を与え、しかも表情の綾が細かく、スケールの豊かさとこまやかな抒情が両立して、すこぶるバランスの良い奏楽である。

知的で、しかも洗練された音楽性豊かなブレンデルならではのシューマンであり、彫琢された音色で、繊細に表情をつけながら、この曲にひそむ、一抹の不安感や、悲哀の色を見事に引き出している。

ブレンデルは華やかさには目もくれず、きわめて構成的な演奏であり、ロマンティックな曲への沈潜を窺わす、近代的な演奏スタイルで、内面的なシューマンの世界を描き出して余すところがない。

十分ロマン的でありながら、その表情は決して大げさに崩れることのない、制御の利いたブレンデルらしいアプローチが、シューマンの音楽の美しさを次々に明らかにしていく。

アバドの指揮もそうしたソロを充実した演奏によって、実に間然するところなく支えて、ブレンデルのスタイルに追随したもので、明敏な指揮でピアノをくっきりと生かしていて、その一体感がこの演奏のクォリティを高いものにしている。

両者の呼吸の合った演奏が感興豊かであり、幻想的な作品に瑞々しいロマンティシズムを新鮮に表出していて、デリケートな抒情にも不足がない。

この曲があまりすぐれた演奏に恵まれないのは、ソリストと指揮者の協調が難しいためで、ソロはいいけど指揮はもうひとつだったり、その逆も案外多い。

そうした中でアバドの指揮によるブレンデルが傑出しているのは偶然ではなく、アバドが作品を的確にとらえてソリストの個性に鋭く反応しているからで、この演奏においても、呼吸の乱れは少しもなく、ブレンデルの情感豊かな表現を見事に生かしきっている。

また、このCDを推すもうひとつの大きな魅力は、ウェーバーのコンツェルトシュトゥックが収録されていることで、シューマンに劣らぬ名演なので一聴をお薦めしたい。

ロマン派の先駆者と言われるウェーバーのピアノ曲は、豊かな色彩感にあふれ、ロマンティックな表情が前面に満ちているが、ブレンデルはそうしたウェーバーの音楽の特質をよくつかみ、きわめて美しい音色でまとめている。

この曲は録音も少ないのだが、ブレンデルとアバドは、劇的な才能に恵まれたウェーバーが十字軍の騎士と夫人の愛の勝利を描いたという、いかにもロマン的な標題をもつ曲の面白さと魅力を表情豊かに生き生きと表現している。

きわめて充実した演奏で、ブレンデルの明晰なタッチが音楽の本質を明確に伝え、アバドとのコンビネーションもすばらしく、競演の醍醐味を堪能することができる。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 00:27コメント(0)トラックバック(0)ブレンデル | アバド 

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ