2016年10月02日
レーグナー&ベルリン放送響のジークフリート牧歌/ワーグナー名演集
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選曲も妥当だし、演奏もなかなか安定していて、ワーグナーの音楽そのものをじっくりと鑑賞したい方に是非お薦めしたい1枚である。
レーグナーはワーグナーが書いたスコアを誠実に鳴らし、その音符ひとつひとつを自ら語らせてゆく。
全体の見通し、つまり造形もきわめて確かで、ここにレーグナーの類稀な才能をみせている。
楽器の存在を忘れさせて、人間の心そのものしか感じさせないような有機的な響きを創造する、その実力は恐るべきものと言える。
そのうえテンポのさばき方の妙、間のよさ、ダイナミックスとの関連性は第一級である。
レーグナーの指揮には派手なアピールも華やかさもないが、常に落ち着いたテンポを設定して音楽を練り上げていく、ドイツの職人気質を感じさせる。
しかもそこから生まれてくる音楽は飾り気こそないが、足取りの確かな演奏で、格調を高めるために少し音楽を抑制しているが、重厚かつ荘厳、玄人をも唸らせるような深い感動をもたらしてくれる。
『マイスタージンガー』の前奏曲はその最たる例で、この楽劇のエッセンスを抉り出したような壮大さを、決して表面的な美しさではなく、叙事詩として徹底的に聴かせてくるのが特徴ではないだろうか。
遅めのテンポの上に内容とこくのある響きが乗り、各楽器がよく溶け合った鬱然として暗い音色、レガートを効かせた旋律線、広々と解放される歌、有機的に浮き沈みする動機の数々、特にチェロの対旋律が湧き出るあたりは背筋がゾクゾクする。
他の曲にも共通して言えることだが、ワーグナーの音楽は下手をするとこけおどしのはったり的な要素が出てしまう。
しかしレーグナーの指揮はそうしたことから全く無縁で、冷徹な知性と一途とも言える情熱から構築された音楽が溢れ出るように聴こえてくる。
しかし、さらに美しいのは『ジークフリート牧歌』で、これはレーグナーの全ディスクの中の最高と言えるだろう。
少し遅めのテンポの中に作品への共感をしっとり込めながら、爽やかに歌いついで美しく、夜明けの深い森にたたずんでいるような永遠の安らぎに満たされた幸福感を感じさせてくれる。
それは心の内面を癒し、潤すような大自然の穏やかなぬくもりにも似ていて、質の高い、自発性に満ちた演奏で、本当に体中が震えるような、恍惚たる陶酔感に満ちた美演と言えよう。
オーケストラの極上の音質、もはや楽器が出す音とは思えない血の通ったハーモニー、そう、フルトヴェングラーが最新のステレオで録音したら、こんな演奏に聴こえるに違いない。
事実、胸をしめつけるようなピアニッシモ、情緒にあふれたフレーズのつながり具合など、フルトヴェングラーにそっくりな場面が多々あり、現代には珍しいロマンティックな、自在な、温かいワーグナーが流れてゆくのである。
今回のCDでは以前ベルリン・クラシックスから出ていたCDの欠点だった音質のざらつきや、LPから直接起こしたような音の揺れがかなり改善されて、自然な響きの録音が美しく、滑らかで艶のある音色を再現しているが、これはリマスタリングの効果だろう。
また同じシリーズで同指揮者、ベルリン放送交響楽団によるビゼーの組曲『アルルの女』やベートーヴェン序曲集なども今回リニューアルされてリリースされた。
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