2016年10月04日
ケンペのワーグナー:楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』
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当時オペラ上演のための劇場を失っていたシュターツカペレ・ドレスデンとそのコーラスがルドルフ・ケンペを迎えて、戦禍にも絶えることがなかった古き良き時代のドイツ精神の高揚と彼らのオペラ再興への強い情熱、そして弥が上にもその底力をみせたワーグナーの『マイスタージンガー』である。
ある意味ではソヴィエトの文化政策介入への牽制があったのかも知れない。
ケンペは多くの登場人物を的確に描き分けて、大規模なオーケストラにも几帳面な指示を与え堅実かつ感性豊かなワーグナーの世界を提示している。
純粋な演奏時間だけで4時間を超す大作だが、すっきりと纏められている上に音質も良く全曲を聴き通すのが苦にならない。
尚このセットにはライナー・ノーツは付いているが、歌詞対訳は省略されている。
中部ドイツ放送制作のマスター・テープの録音およびその保存状態が極めて良好で、ここにも彼らの高い技術水準が示されている。
モノラル録音ながら今回のリマスタリングによって細部まで鮮明な音質で鑑賞できるし、セッションであるために音場が近く歌手達の声に潤いと臨場感があり、余計な雑音がないのも幸いだ。
キャスティングでもエヴァにティアーナ・レムニッツ、ハンス・ザックスがフェルディナンド・フランツ、ポーグナーにクルト・ベーメ、また騎士ヴァルターには当時全盛期だったヘルデン・テノールのベルント・アルデンホフなど実力派歌手を起用して、ドレスデンの威信を賭けた万全の態勢で臨んでいたことが理解できる。
ドレスデン市街は1945年2月の大空襲による爆撃でオペラの殿堂だったゼンパーオーパーはもとより演劇用のシャウシュピールハウスも大破したが、幸い後者は1948年から使用可能な状態に修復され、1950年にはケンペ、シュターツカペレによる『マイスタージンガー』の上演に漕ぎ着けた。
これが成功裡に終了したことから翌年同じメンバーでのレコーディングが中部ドイツ放送によって実現した。
録音会場は主としてシャウシュピールハウスのグローサーザールと衛生博物館が使われている。
ちなみにゼンパーオーパーが完全に再建され、ブロムシュテットによるベートーヴェンの『第9』で不死鳥のように甦るのはようやっと1985年のことになり、それまでメンバーたちが本格的なオペラを上演できなかったことを考えれば、それが悲願の達成であったことは想像に難くない。
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