2016年10月09日

エル=バシャのバッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻


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近年来日も多く、ピアノ界の新たな巨匠として特別な存在感を発揮するアブデル=ラーマン・エル=バシャのバッハ『平均律クラヴィーア曲集 第2巻』(2014年、神奈川・相模湖交流センターにて収録)の登場だ。

大絶賛を受けた第1巻に続き、本作でもエル=バシャの繊細なタッチにより生み出される作品の美観と構築性は健在で、先ず、何よりもエル=バシャの奏でるピアノの音が実に美しい。

第1巻と同様に、エル=バシャの強い希望によりべヒシュタインD−280を使用したとのことであるが、その効果は抜群であり、他の数々の名演とは一線を画するような、実に美しくも深みのある音色が演奏全体を支配している。

卓越した技術をもとに奏でられるその音は、まったく混濁がないが、絶妙なペダリングにより暖かな響きを導き出し、シンプルで飾り気のない美しい音色、ピュアなサウンドはエル=バシャの魅力のひとつであろう。

エル=バシャのアプローチはあくまでも正攻法であり、いささかも奇を衒うことなく、曲想を丁寧に精緻に描き出していくというものだ。

かかるアプローチは、前述のようなピアノの音との相性が抜群であり、このような点に、エル=バシャの同曲への深い拘りと理解を感じるのである。

また、エル=バシャのアプローチは正攻法で、精緻でもあるのだが、決して没個性的というわけではなく、徹頭徹尾エル=バシャのアナリーゼが展開される。

1曲目のプレリュードから即バッハの世界に引き込み、隙のない緊張感と豊かな響きのなかで「無限の調和」の旅をしているかのようである。

より自由に奏でられるプレリュード、完全に構築されてゆくフーガ、この「静」と「動」で展開される偉大なるバッハの作品を完全に創造している。

もちろん、平均律クラヴィーア曲集の綺羅星の如く輝く過去の演奏、例えば、グールドやリヒテル、アファナシエフなどのような聴き手の度肝を抜くような特異な個性があるわけではないが、表現力は非常に幅広く、卓抜したテクニックをベースに、テンポの緩急を自在に操りつつ、強靭な打鍵から繊細な抒情に至るまで、実に内容豊かな音楽を構築している点を高く評価したい。

これまでの平均律クラヴィーア曲集の名演では、構成されたプレリュード、フーガの各曲すべてが優れた演奏ということは殆どなく、曲によっては特に優れた演奏がある一方で、いささか不満が残る演奏も混在するというのが通例であった。

しかし、エル=パシャによる本演奏では、特に優れた特記すべき演奏があるわけではないが、いずれの曲も水準以上の演奏であり、不出来な演奏がないというのが素晴らしい。

こうした演奏の特徴は、長大な同作品を、聴き手の緊張感をいささかも弛緩させることなく、一気呵成に聴かせてしまうという至芸に大きく貢献しており、ここに、エル=バシャの類稀なる音楽性と才能を大いに感じるのである。

名器ベヒシュタインによる深みのある音色が、エル=バシャの音楽を支え、徹頭徹尾表現される調和と秩序の美しいピアニズムが堪能できるもので、期待を裏切らぬ高水準の名演と高く評価したい。

録音は、SACDによる極上の高音質録音であり、エル=バシャの美しいピアノを鮮明な音質で味わうことができる点も評価したい。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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