2016年10月18日

トスカニーニのヴェルディ:レクイエム(ステレオ・ヴァージョン)


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この演奏は1951年1月27日にニューヨークのカーネギー・ホールで録音されて以来リリースを重ねている名盤のひとつだが、欧米でも当時ステレオLP盤を実現していたレコード・メーカーはまだ一社もなく、基本的にはモノラル録音なのだが、SP時代の録音は原盤が脆かったために時にはマイクを2本を立てて複数のマスターが作られることがあったという。

そうすると同一の演奏でもマイクの定位置が異なるため僅かに異なるマスターが出来る。

それらを技術的に合成するとステレオ的な広がりが得られるのだそうだ。

例えばストコフスキーの『動物の謝肉祭』、『春の祭典』(1929年)やエルガーの自作自演による『コケイン』(1933年)等で同演奏で別位置のマスターが見つかっており、それらを合成した音源がPristine ClassicalやNaxosから発売されているが、いずれもとても1920〜30年代とは思えないほど素晴らしい音質である。

そしてこのトスカニーニのヴェルディもライヴの録音の際マイクが複数立てられており、それらをひとつに重ねたものが本盤。

このコンサート当日には左右に1セットずつの異なった録音機材が設置されていたことから、双方の音源をリミックスして強引にステレオCD化したもののようだ。

しかし音場を拡げるだけの擬似ステレオとは違って、まがりなりにも左右が独立した2トラック録音のステレオ効果が得られているのが特徴で、実際鑑賞してみると初期のステレオ・ライヴに匹敵するくらい巧く合成されている。

ただし60年以上も前の音源なのでふたつのテープの間に時間的齟齬が生じるのは当然で、そうした部分については修正されている。

いずれにしても演奏が素晴らしく、また音質自体も悪くないので一聴に値するCDとしてトスカニーニ・ファンのみならず、ヴェルディの音楽を愛する人にとっても歴史的なライヴであるに違いない。

4人のソリストのうち3人がイタリア人で、中でもテノールのディ・ステファノとバスのシエピはシュヴァルツコップとドミンゲスが加わる1954年のデ・サーバタ指揮、ミラノ・スカラ座とのセッションでも名演奏を遺した『ヴェルレク』のスペシャリストだ。

ディ・ステファノのオペラティックで明るい高音が冴える「インジェミスコ」やシエピの深々としたカンタービレには他の歌手では得難い魅力がある。

ヴェルディのレクイエムはイタリアの文豪アレッサンドロ・マンゾーニ追悼のために作曲された。

ヴェルディの対位法のテクニックが駆使されていると同時に声の威力が極限まで引き出されていて、一般に理解される宗教曲という概念には収まらない、殆んど1曲のオペラの様相を呈している。

4人のソロと大規模なオーケストラ、コーラスが咽び泣き、咆哮する音楽はしめやかな教会の内部より、劇場空間でこそ圧倒的な効果を上げることができるし、イタリア・オペラを熟知したトスカニーニがひとつの理想的な演奏を遺してくれたと言えるだろう。

トスカニーニが残した素晴らしい演奏の中でもとりわけ名高いこの演奏が純正では無いものの、ステレオで聴けるのは本当に僥倖だ。

なお、Memories盤では全くといっていいほど触れられていないが、このトスカニーニの偶発ステレオの経緯はPristine Classicalのサイトに詳しい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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