2016年10月20日

アーノンクール&レオンハルトのバッハ:カンタータ大全集(1)


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アーノンクールとレオンハルトというバッハの権威を2つの柱に据え、オリジナル楽器を使って原典に忠実な再現を目指したシリーズ。アーノンクールのリズムを強調した先鋭に加え、現代におけるバッハへのアプローチの新視点に対し、かたやレオンハルトの穏やかな自然体の暖かさの中で、これも新しいバッハ像の確立と、それぞれの受け持ちナンバーから様々なバッハが見えてくるのも楽しい。精密な考証で現代にあるバッハの命をふくよかに伝え、学問的リゴリズムに陥らず、バッハ当時の音楽再現と共にひとつのスタンダードな演奏法を確立しているカンタータ大全集で、10年以上もかけて完成した労作だけに、入念な考証、演奏法、テキスト・クリティックが素晴らしい。目の覚めるような新鮮な演奏で、合唱、独唱、楽器陣、いずれも神への賛美と感謝の心が漲っている。一桁のナンバーでは少年たちが何という美しい声をきかせてくれることだろう!合唱指揮者ギレスベルガーの徹底した指揮もあってのことだろうが、信じがたいほどの充実ぶりで、ソロも素晴らしい。教会の中で聴く場合は別にして、この手の録音には少年たちの受け持つソプラノやアルトの音程が定まらないことや、ヴィブラートのない直線的な声と男声パートの間に隙間が感じられたりするが、ここにはそういう心配がまるでない。第10番は「マニフィカト」のドイツ語版。レオンハルトの演奏は、合唱(テノール、バス)がやや暴走気味なのが惜しい。第11番は、カンタータというよりむしろ“昇天祭オラトリオ”とでも称すべき作品だが、ここでのアーノンクールの指揮はまろやかな音を前面に押し出して堅実な構成を見せている。歌い込みも充分で、各曲の対比感がうまく捉えられている。第12番は細やかな配慮が随所に感じられ、この曲の持っているロマン的性格をエクヴィルツ以下の歌手が恐れずに表出している。第13番は曲が第12番と比べて難しく、バスのアリアも妙なアクセントがついている。第16番は冒頭のコラールを歌う少年合唱の発声がウィーンのものと違ってひどくローカルなのが残念。アーノンクールはできる限りの原典考証を学究的研究で突き詰め、不備な書法を補いながら優れた演奏を刻んでいる。特に第18番の第3曲は難曲だが、ここでの完璧なメリスマ唱法と通奏低音の気魄のこもった応答には頭が下がる。ソプラノ、テノール、合唱共に名演である。第19番の合唱も熱の入ったもので、1音符ともゆるがせにしない。第20番も全篇を通じて楽器の選び方に細心の注意が払われている。第21番は、バッハの青年時代のカンタータの総決算とも言うべき最も壮大な記念碑である。アーノンクールを始め、メンバーの呼吸の合った演奏は見事で、深い敬意を払わずにはいられない。第22,23番は、共に1723年2月7日の聖日のために作曲されたものだが、第23番の方が作品としては強い説得力に溢れ、深い感動を聴く者に呼び起こす。レオンハルトの指揮も熱っぽい演奏で生き生きと描いている。第24番は“三位一体祭”後第4日曜日用のカンタータで、ノイマイスターの台詞によっている。第25番も第14日曜日のためのもので、冒頭第1曲の合唱におけるコラールの扱い方が見事。第16日曜日のための第27番は優れた内容と技法を持っており、充実した演奏でアンサンブルもよい。第28番は第1曲のソプラノのアリアの音楽的表現力の確かさが優れており、第29番では第3曲のテノールのアリアが、エクヴィルツの数多いバッハの中でも特にその音楽性の豊かさで抜きん出ている。第30番でも独唱者がよく歌い、舞曲のリズムや切分音の特徴あるリズムを生き生きと描き出している。第31番は、初演当時の演奏様式の再現として短三度も上の調性で演奏されており、多少無理押しした感じもあるがそう気にならない。第32,33番では、レオンハルトが緊張感に満ちた好演をみせ、エグモント、ヤーコプスがそれぞれ美しい歌唱を聴かせる。第34番でのエスウッドの円熟したアリアも素晴らしい。ここではアーノンクールが目立たないようにテンポを効かせながら、曲にニュアンスを添えている。第35番は、アルトのためのソロ・カンタータとしての性格に多彩な変化を与えており、エスウッドの円熟した歌唱が聴きもの。第36番は2本のオーボエ・ダモーレが雅びた音色の中に美しく演奏され、ウィーン少年合唱団員が清澄な歌唱を聴かせてくれる。第37番では、デル・メールによるアリアが美しい。レオンハルトが指揮した第39、40番では、デビュー当時のルネ・ヤーコプスの若々しいカウンター・テノールが、エスウッドとは一味違った色彩感いっぱいの歌唱を繰り広げる。第43番は第7曲のバスのアリアにおけるC管無弁トランペットの至難なパッセージでも、この超絶技巧を見事に克服し、歌ともども名演の極致を聴かせる。第44番では第3曲のアルトとオーボエのかけ合いが美しく、第4曲のコラールを支えるファゴットの慰めに満ちた音色とエクヴィルツの緊張感が感動的に対照を作っている。第45,46番はヤーコプスがまだ若い故の気負いがあるが、美しい声質だ。第47番から第50番にかけては、アーノンクールの強力な統率力がうかがわれる。ウィーン少年合唱団のイェーロジツがなかなかの名唱で、明るく澄んだ声と正確なパッセージの歌唱はなかなかのもの。第49番の新郎と新婦の対話など微笑ましい。第51番のボーイ・ソプラノのクヴェックジルバーは、なまじ生活感情の入り込まぬ子供の無垢な心で全く見事に歌い切っており、子供というものの可能性の無限への広がりに驚嘆の念を禁じ得ない。レオンハルトは第54番で、このテキストの熱烈なムードがそのまま反映した音楽を生々しく描き出しており、第55番においても非常に緊張力に富んだ演奏を展開している。第57番でアーノンクールは、テキストと音楽を突き詰めてのアゴーギクやフレージング、アーティキュレーションを効果的に用いながら曲を進めている。この第5曲目のアリアの至難なパッセージを、バスのデル・メールが驚くべき正確さと音楽性をもって歌い切っているのも驚嘆させられる。第58番のボーイ・ソプラノも不完全な部分はあるが、健気で一途な歌いぶりには不思議な感動に誘われる。第61番から第64番にかけては喜ばしい気分の曲が並んでおり、古楽器を使いながらも現代的感覚を生かそうと付点音符の扱いをやや鋭くしたり表情を細分化したりして、待降節のふくらむ気持ちを描き出そうと試みているが、テルツ少年合唱団が実力不足で、アーノンクールの意図に沿いきれていない。総じて、緻密な仕上げが感じられず、何とも不満足な出来。第65番はデル・メールの朗々たる歌いぶり、エクヴィルツの音楽的充実が快い興奮を誘う。第66番はエスウッドとエクヴィルツの音色が実によくマッチして名唱。第67番はテンポの変化の難しい曲だが、指揮のレオンハルトが自然な流れの中にこれを捉え、成功している。ハノーヴァー少年合唱団の素直な歌いぶりもよい。第68番はイェーロジツが見事な歌唱を聴かせる。第69番から第72番にかけてはテルツ少年合唱団は引き締まった音色と音楽を作り出している。殊にボーイ・ソプラノのヴィードツが健闘して、感動的な歌を聴かせてくれる。音楽的な成熟が感じられ、大人も及ばないような立派なアリアだ。アーノンクールは全編に漲る劇的な世界をリアルに表現するように心がけている。なかでも第2部のバスのアリアは見事な歌い込みだ。第73番冒頭からレオンハルトはアクセントのはっきりした音色設定を試み、合唱もマルカート唱法で進められ、各フレーズの相関的遠近感覚がくっきり浮かび上がってくる。合唱は、子供ながら感情のこもった表現と言葉に対する鋭敏な反応を示している。第74番第4曲のバスのアリアにおけるエグモントは極めて好調。第75番のクラウスのレチタティーヴォとアリアが技巧的にも余裕があっていい。第76番は、冒頭の合唱からテルツ少年合唱団の声の不透明さとリズムの切れの悪さが気になる。アーノンクールはそれを是正しようとかなり無理なドライヴをしている。第77番のハノーファー少年合唱団は、テルツ少年合唱団に比べると引き締まった演奏を聴かせる。第78番はソプラノもよく歌えていて、音色もリズムもぴったりと合っていて見事。リズムの処理は全体的に鋭い。第80番から第83番は4曲すべてアーノンクールのチームによる演奏で、鮮烈な響きの感覚と躍動感に溢れている。第80番と第82番が名作として知られ、特に前者でのエスウッドとエクヴィルツが充実しており歌唱も美しい。その他の男声はボーイ・ソプラノを含めて少しばらつきがあり、合唱も表情が淡泊だが全集としての安定感には欠けていない。第83番は今となっては表現がいささか古めかしくなった。第84番は冒頭から全曲にわたりオーボエの美しい音色とフレージングの豊かさが強い印象を与える。ヴィードルも立派に歌っていて見事だ。第86番はオーボエ・ダモーレが印象的。第87番はソリスト達が冴え、白眉とも言うべき名演。第88,89番ではエグモントが余裕たっぷりに歌い、第90番は無弁トランペットが強烈な印象を残す。第95番はエクヴィルツが印象深い歌唱を展開する。第96番はフッテンロッハーが名演で、清潔な音楽作りの中にバッハをゆったりと実感させてくれる。第97番は冒頭の合唱に珍しくフランス風序曲の形式がとられ、合唱と器楽の輝かしい協奏が繰り広げられる。それぞれのソリスト達も力演している。第98番はエスウッドのレチタティーヴォが深い表現を聴かせている。第99番は第3曲のテノールのアリアが曲として美しく、第100番は第2曲のテノールとアルトの二重唱が2人がよく和して美しい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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