2016年11月11日

ブライロフスキーのショパン:ピアノ作品集


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アレクザンダー・ブライロフスキーと言えば、SP時代からLP、そして1960年代のステレオ初期の頃まで一世を風靡したピアニストだが、彼が引退してその名が聞かれなくなった頃から、彼の残した多くの録音が、特に日本では次々に廃盤になっていった。

そしてブライロフスキーの死から40年近くなった現在、過去の名演奏家の古い録音のCD化が流行しているにもかかわらず、彼の演奏のCDはわずかに数枚を数えるに過ぎない。

これをみると、ブライロフスキーは日本ではあまり評価されず、好まれないピアニストなのかもしれない。

確かにブライロフスキーの演奏には独特の癖とも言える個性があった。

これは若い頃にはもっと前面に出ていたというが、彼が長い間パリとニューヨークという国際都市の檜舞台を中心に活動しているうちに、磨き上げられ、洗練されて、独自の演奏スタイルを作り上げたと言える。

だから現在彼の演奏を聴いても決して古い、時代遅れのスタイルではなく、逆に没個性的で平均化した現代の多くの演奏家の中にあっては、新たな魅力を感じさせるように思う。

ブライロフスキーが爛轡腑僖鷄藾娉鉢瓩噺世錣譴襪茲Δ砲覆辰燭里蓮▲僖蠅離廛譽ぅ┘襦Ε曄璽襪韮尭間にわたるショパン・チクルスを行ない、全172曲の作品を演奏したことがその始まりである。

「当時は第1次大戦前後で、ようやく念願の独立を勝ち得たポーランドに対する関心が、世界的に高まっていた時でした。そこで私もポーランドの偉大なショパンに自分の全精神を投入する企画を立てたのです。」

ブライロフスキーがショパン・チクルスを行なうことを思い立ったのは、もちろんこのような考えからであったことは確かだが、その直接的なきっかけは、師とも言うべきモーリッツ・モシュコフスキーに負うところも大きいように思われる。

モシュコフスキーはポーランド出身の名ピアニストで、作曲家としても知られているが、1897年からパリに住んでいた。

当時既に60歳も半ばの年齢であったが、全盛期はたいへんな技巧家として知られ、またショパン演奏のスペシャリストでもあった。

ブライロフスキーがモシュコフスキーから直接教えを受けたという記録はないが、ことにショパンの演奏に関しては色々と助言を受けたことは充分に考えられる。

それともう一つは、これは筆者の単なる憶測に過ぎないが、当時のパリにはモシュコフスキーをはじめ、アルフレッド・コルトーやラザール・レヴィなど優れた演奏家がたくさん居たから、よほど話題性のある演奏会を行なわないと注目されない、と考えたこともあるのではなかろうか。

そしてこの「ショパン作品連続演奏会」は、その後ブライロフスキーのトレード・マークのようなものになり、1938年にニューヨークでも試みて大成功をおさめている。

また1960年、ショパン生誕150年の記念の年にも、ニューヨークとブリュッセルで連続演奏会を開き、同時に全作品のレコーディングを新たに行なっている。

このようにブライロフスキーは、その生涯に何回となくショパン・チクルスを行ない、また彼の残した録音でもショパンの作品が圧倒的多数を占めているから、ショパンのスペシャリストの一人に数えられている。

生前のブライロフスキーは、アメリカで最も人気のあるピアニストの一人に数えられていたが、特にこのピアニストのショパン弾きとしての名声には目を見張るものがあったと言っても過言ではないだろう。

それではブライロフスキーがなぜ初期の頃から、特別にショパンの作品を選んだのであろうか、その理由については、既に二つの事柄を挙げておいた。

その一つはモシュコフスキーの影響であり、もう一つは彼自身の言葉を引用したように、時代的な要請とそれに対する彼の対応の仕方である。

しかしそれ以外にもう一つ、彼がロシア人で、ポーランドと同じスラヴ系の出身であったことにもよるのではないかと思われる。

なぜそのような点を挙げるかというと、ブライロフスキーはパリで活動するにあたって、自分の演奏するショパンはフランス人の演奏するラテン的な表現とは異なるということを主張したかったように思われるからである。

しかも実はそこにブライロフスキーのショパンの演奏の真の特色があるように思うのである。

最初にも述べたように、ブライロフスキーはパリやニューヨークという国際都市で活動しているうちに、より洗練された感覚を演奏の中に加えていったが、しかし完全にフランス風の洗練さや洒落た感覚の域に達することはできなかった。

その根底にはやや無骨とも言えるスラヴ的なヴァイタリティがあり、それが無意識のうちに表出しているから、彼の演奏を聴いていると、ショパンの音楽の持っているそうした側面も感じることができるように思う。

だからたいへん大胆な言い方をすれば、ブライロフスキーのショパンの演奏はフランス流派とポーランド流派の中間をいくものと言えるかもしれない。

本セットに収められたCDに聴くブライロフスキーのショパンは、この巨匠の芸風の醍醐味を伝える名演集であり、力強くダイナミックで、華やかであると同時にブリリアントでもある。

そして、ある種の爽快感さえも感じさせる彼のショパンでは、明快でメリハリの効いた表現がとても快いものになっており、それは、このピアニストならではの聴かせどころのツボを巧みに心得たショパンの再現を実現させる結果を生んでいたのである。

ブライロフスキーに言わせると、「ショパンの演奏家で他の作曲家の作品が不得意な人というのは考えられない。なぜならば、ショパンの音楽はたいへん豊かなスタイルを持っており、その中には他の作曲家の色々な要素が入っているからだ」という。

稀にみる説得力を生んでいるこれらの演奏では、未だに演奏様式的な古さが感じられないことも、特筆される必要があるだろう。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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