2016年11月15日

マレイ・ペライア・プレイズ・ショパン


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マレイ・ペライアのショパン演奏集を6枚のCDにまとめた廉価盤で、類稀な美音と優れた音楽性で知られ、「ピアノのプリンス」と呼ばれるペライアの魅力を堪能することができるショパンである。

晩年のホロヴィッツとの親交によりヴィルトゥオーゾ・ピアニストとして新境地をひらき、音楽家としての充実ぶりが伝わってくるペライアの記念碑的アルバムとして人気の名盤。

瑞々しい息吹きをたたえた詩的な感覚は、新世代のショパン表現と高い評価を得て、磨き抜かれたペライアのピアニズムが美しく結晶化している。

彼の40年に亘るキャリアを記念した全集を既に持っている熱心なペライア・ファンは別としても、気軽に親しめる第一級のショパン作品集として入門者にもお薦めできる優れたセットである。

尚ピアノ協奏曲第1番ホ短調の音源に関してはズービン・メータとのニューヨーク・フィル及びイスラエル・フィルの2種類が存在するが、ここでは後者1989年の再録音の方が採用されている。

ペライアのショパンは強烈な個性を放っているわけではないが、オーソドックスな解釈の中にもクリアーなタッチから引き出されるマイルドで美しい音色を一瞬たりとも失うことのない知的なコントロールが貫かれている。

それは決して小ぢんまりとした大人しい奏法ではなく、きめ細かな表情から全力を注ぎ込むスケールの大きな表現までが矛盾をきたさずに自然に統合される音楽設計も見事だ。

ペライアのタッチは美しい響きをもち、特に弱音で旋律を歌わせるときの余韻が実に清楚で、レガートの美しさを十分に生かし、滑らかなフレージングが細かな表情の変化を伴って豊かなニュアンスを生み出している。

ペライアは実に入念に考え抜いた表現を生み出すが、その点では極めて今日的なショパンであり、技術的にも見事である。

変に突出せず十全な形でショパンの作品を聴かせており、端的に言えばその演奏は没個性に向かいかねない兆候ともとられるが、この演奏はそのぎりぎりの瀬戸際で成り立っている。

解釈は極めてオーソドックスで少しの気負いもなく、こまやかな感情の動きを率直に表現しており、こうしたところにも彼の頭脳的プレーと筋の通ったポリシーを窺わせている。

ペライアは、リリカルとかピアノの詩人とか形容されているが、音楽から受ける印象はスポーティで、情緒も音楽も停滞がない。

何より素晴らしいのは、この演奏にはまさしく“華”があることで、表現の起伏は大きく、ドラマは十全に演出されてゆき、しかも細部の語り口も極めて入念、これを聴いていると、しばしの間、至福の状態を味わうことができる。

ペライア28歳の時の『24の前奏曲集』ではショパンの音楽自体が持っている冷徹さや翳りのようなものはそれほど感じられない。

現在の彼と比べると、自らの音楽を迷うことなく確信し、演奏を繰り広げていく感が強く、ショパンの楽譜に向かって真正面から自分をぶつけている。

表現の力強さとテクニックの大きさでぐいぐいと引っ張っていく力は充分に感じられるが、表現のデリカシーや抒情性の点でやや荒さがあるのは、年齢を考えると致し方あるまい。

むしろ、その一貫して真摯な演奏が絶賛されているペライアが21世紀に発表した鮮烈なショパンとして注目を集めた『エチュード』でのより円熟した多彩な表現力が優っているだろう。

また2曲のピアノ協奏曲では溢れんばかりの情熱的な表現とコントラストをなす緩徐楽章の洗練を極めた抒情が例えようもなく美しく、メロディの羅列になりやすいショパンの2曲を細心さをもって弾き切っている。

各主題の美しさはもちろんだが、経過部での表情付けはショパン演奏のひとつの手本となり得るものであり、メータの指揮も自信に満ちて若々しく、充実感満点だ。

更に、有名な「幻想即興曲」を含む4曲の『即興曲』では抜群に冴えわたる指さばきが、エネルギッシュに展開され、『舟歌』のリズムには活気が、『子守歌』には明るさがあり、この後何度かの故障からカムバックして大輪の花を咲かせるペライアの特質が十分に披露されている。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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