2016年11月19日

シェリング&ヴァルヒャのバッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ(全曲)


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これまでにリリースされたこの曲集の録音の中でも最もシンプルな響きで格調が高く、逆説的な言い方をすれば、演奏者ではなく純粋に音楽そのものを聴きたい人を強く惹きつけて止まない魅力を持っている。

既に製造中止になって久しかったCDなので今回の復活を大いに歓迎したい。

シェリングとヴァルヒャという一期一会の協演の中で、彼ら自身もその緊張感を感じ取っていたに違いない。

ヴァルヒャが他の演奏家と共演している珍しいディスクとして注目すべき全集で、事実ヴァルヒャにとってシェリングが唯一無二の協演者になった。

これは、伴奏者にヴァルヒャを起用しているだけあって、シェリングの流麗な美音が際立っていて、ロマン的な傾向の強いものになっており、実に熱っぽく、まるで2人の奏者の間に火花の飛び交うような、気迫のこもった演奏を繰り広げている。

総体的に速めのテンポだが、ヴァイオリンの音色は、艶やかさとふくらみがあり、チェンバロも実に落ち着いている。

速い楽章では、シェリングがリードしているかのようにも思えるが、緩徐楽章は柔軟でロマンティック、2人の呼吸はぴったりと合っている。

厳格なバッハを好む人には反発を感じるかもしれないが、胸にもたれることがないので、目くじらをたてることもあるまい。

ここでのヴァルヒャはシェリングを立て、彼との協調を重んじた演奏ぶりで、ヴァルヒャにこんな一面があろうとは思わなかった。

この2人はバッハの音楽の再現に忠実に奉仕するために不必要と思われるあらゆる要素を省いている。

演奏に全く隙がなく、お互いの響きを音価の最後まで聴き逃さず、全身全霊を込めてバッハの対位法を紡ぎ出していく演奏は、ある意味では聴き手を選んでしまうかも知れないが、その真摯な姿勢に心を打たれるのも事実だ。

ヴァルヒャはバッハの総ての鍵盤楽器のための作品と、鍵盤楽器が加わる曲目をくまなく暗譜していたにも拘らず、この曲集以外のアンサンブルや協奏曲などの録音は一切遺していない。

それは全く残念なことだが、唯一のデュエットに示した彼の取り組みは驚くべき厳格さを示している。

端的に言えばシェリングがヴァルヒャに妥協したのでもなければ、またその逆でもない。

互いに全神経を集中して、張り詰めた琴線を奏でるような稀に見る協調と緊張感の持続で全曲が貫かれていて、そこには汲めども尽きないほどの深遠なバッハの世界が開けている。

この組み合わせでの演奏は本盤でしか聴くことができないが、この2人の巨匠の演奏には、しみじみとした精神的な深さがあり、バッハの音楽の本質をよくつかんでいる。

尚現在廃盤の憂き目に遭っている、ヴァルヒャがヒストリカル・チェンバロを弾いたもうひとつのサンプルになる1974年の2回目の『平均律』全曲も是非復活して欲しい音源だ。

1969年の録音で、2人の使用楽器については明記されていないが、シェリングがこの時期に弾いていたのはグァルネリ・デル・ジェズで、この演奏も例外ではないだろう。

一方ヴァルヒャは楽器の響きからして、彼がそれ以前の多くの録音に用いたユルゲン・アンマーのモダン・チェンバロではなく、おそらくルッカース系のヒストリカル・チェンバロを修復したオリジナル楽器と思われる。

演奏形態からすればシェリングのそれは当然モダン奏法で、またピッチもa'=440Hzが採用されているので、その点では2人の奏法に隔たりがあるのは事実だが、バッハを生涯の課題とした彼らがそうした領域を遥かに超越したところで堅牢無比なデュエットを成り立たせたと言えないだろうか。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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