2016年11月29日

シャイー&コンセルトヘボウのメシアン:トゥーランガリラ交響曲


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メシアン(Olivier Messiaen 1908-1992)はフランスの作曲家で、最近まで現代音楽の代名詞のような作曲家であった。

現代では、もう少しロマン派よりの立ち位置を与えられることもあるが、ブーレーズ(Pierre Boulez 1925-)、シュトゥックハウゼン(Karlheinz Stockhausen 1928-2007)とともに第2次大戦後の現代音楽の潮流を作った象徴的音楽家。

本盤は、メシアンの代表作の1つであり、20世紀の記念碑と言うべきトゥーランガリラ交響曲(フランス語: La Turangal'la-Symphonie)を収録している。

リッカルド・シャイー(Riccardo Chailly 1953 -)指揮、コンセルトヘボウ管弦楽団によるメシアンが亡くなった年の録音で、ピアノにティボーデ(Jean-Yves Thibaudet 1961-)、オンド・マルトノ奏者を原田節が担当している。

インドの異教的世界観にインスピレーションを得た作曲家は、主として鳥のさえずりのモティーフを奏でるピアノと艶っぽい響きが特徴のオンド・マルトノを独奏楽器として扱い、打楽器と金管を増強した3管編成のオーケストラで、「忘我の喜悦をもたらす愛」を歌い上げる極彩色の音絵巻を作り上げた。

メシアン自身の解説によれば、トゥーランガリラは仏典などに用いられるサンスクリット語(梵語)で、愛の歌を意味すると同時に、歓び・時・リズム・生と死への賛歌でもあるという。

複雑極まるポリ・リズムと想像を絶する多くの音を駆使して書き上げられた全10楽章から成るこの大作は、1980年代半ばから録音される機会が増え、サロネン(85年)、チョン(90年)、ヤノフスキ(92年)、シャイー(同)の各盤が続いていて、若手の優れた指揮者がこの大作に挑んできた。

この曲もついにオーケストラのレパートリーに加えられるときを迎えて、初演の独奏者であるロリオ姉妹以外の演奏家による録音も増え、作品の普遍性を裏付けている。

楽器の中では特にピアノとオンド・マルトノ(Ondes Martenot)が重要な役割を担っていて、ガムラン的な奏法を求められるピアノは、同時にメシアンの諸作品で暗示的に登場する「小鳥のさえずり」を表現している。

また電気楽器の一種であるオンド・マルトノが独特の音色により、全曲に不可思議な効果を与えている。

さて、このディスクを聴いて第一に思うのが、シャイーのこの音楽への素晴らしい「適性」である。

このメシアンも、例えばこの録音以前で評判の高かった小澤の録音と比べると、ややテンポは速めをとることが多いのだが、そうであって、初めて何か音楽を俯瞰できるような感触を得るように思えて、その印象を、一言で「適性」と表現してみた。

シャイーはコンセルトヘボウ管弦楽団のバランスのいい響きによって、ドラマティックな、振幅の大きい音楽づくりをみせている。

ベリオの《シンフォニア》などで現代作品にも快演を聴かせたシャイーだが、ここでも持ち前の研ぎ澄まされた音への執着をあらわにしながら、同時に恰幅のよい音楽を作っている。

オーケストラの個々の楽器が際立ち、雄弁に歌っているのが特徴で、ことに木管の表情の豊かさは古今の演奏のなかでピカ一である。

前半、第1〜5楽章の高揚、第6楽章「愛の眠りの園」で静まるものの、第7〜10楽章で再び盛り上がってゆく。

その間ずっと緊張を持続させたシャイーの力量、そしてこの曲をいわゆる狷饅造文渋絏山抬瓩ら解放した彼の力量は、並外れて大きく、この曲に必要な神秘感も不足していない。

ティボーデと原田の好演もポイントで、演奏至難なピアノであるが、オーケストラの打楽器陣と調和して、適切なスケーリングを維持しており、技巧的にも問題がない。

原田はこの交響曲に欠かせないスペシャリストであり、オンド・マルトノは適度な下品にならない不気味さ、そこにやや悲しい感情が宿されているのが美しい印象につながる。

ソリストが若返って、音の変化がより鋭角になった感があり、特にオンド・マルトノの膨らみのある音色が、かなり明瞭に感じられる。

シャイーの演奏からは情熱の要素は多く感じられないだろうし、韜晦や晦渋とは無縁で、熱狂的な陶酔からはやや距離があるかもしれないが、そのバランス感覚こそ、この人の最大の美点に他ならない。

この作品で、これだけオーケストラの客観的な美しさを確立できる人というのは、そうはいないはずだ。

デッカの素晴らしい録音技術と相俟って、いまなお同曲の代表的録音として推すのをためらわないアルバムだ。

特筆すべきは、ピアノと打楽器系の抜けの良い音質で、ガムラン的効果を狙った複雑な打楽器のテクスチャーが、見事に立体的に浮かび上がってくる。

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classicalmusic at 22:06コメント(1)メシアン | シャイー 

コメント一覧

1. Posted by Kasshini   2017年09月02日 04:41
この演奏は、かなりお気に入りで、ケント・ナガノ BPh,チョン・ミョンフン パリ・バスティーユ管と聴いて1番気に入っています。ミョンフンはピアノととりわけオンド・マルトノが埋もれがちなのが。埋もれていなければ、同率1位でいいようなと思います。メシアンの音で感がる色彩はインタビューを読んでも独特で、瞑想の果てに観る極彩色が見えていたと思えるような記述も。リズムと音色が聴いていてとても楽しい曲です。さりげなく循環主題を用いているところも。ミョンフンの彼方の閃光、峡谷から星たちへ…は他の演奏者よりも、個人的には好みでした。メシアンが伝えたかった色彩を体現している印象です。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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