2016年12月13日
ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルのグラズノフ:交響曲第4番、第5番、他[SACD]
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プラガ・ディジタルスのムラヴィンスキー・オーケストラル・ワーク集のハイブリッドSACD化は既に9枚目になり、このディスクに収録された3曲は総てモノラル録音だが音質は概ね良好だ。
旧ソヴィエト圏でのステレオ録音が一般的に普及するのは1970年代を待たなければならなかったことを考えればやむを得ず、演奏が素晴らしいだけに惜しまれるが、SACD化によるグレードアップの価値は充分に認められる。
特にオーケストラの音色に磨きがかかり、全体のバランスも良くなったように聞こえる。
例によってプラガの録音データはあまり当てにならない。
交響曲第4番変ホ長調は1948年3月2日録音とライナー・ノーツに記載されているので、メロディア原盤で日本では以前新世界からリリースされたものらしい。
幸い高度な鑑賞に充分堪え得る良好な音質が保たれている。
第5番変ロ長調に関しては1968年9月28日と1970年6月8日東京ライヴしか音源が存在しないので、モノラルの前者で疑いの余地はないだろう。
一方バレエ音楽『四季』はライナー・ノーツでは1969年9月28日ライヴとなっているが、フランク・フォアマン/天羽健三編のディスコグラフィーには記録されていないので、おそらく同年4月20日のライヴと思われる。
この曲のみ演奏後に聴衆の拍手が入っている。
いずれもオーケストラはレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団で、新音源でないことを断わっておく。
グラズノフの作品にはしっかりした形式感とスラヴの民俗舞踏のエレメントやメルヘンチックな情緒が同居しているが、ムラヴィンスキーは感傷やメランコリーによって曲想をゆるがせにすることはなく、突き放した硬派のロマンティシズムを表現している。
そこには甘美な陶酔や遊びの要素などは微塵も感じられず、オーケストラを完璧に統率し、殆んどそのダイナミクスだけで曲を彫琢していく。
曲によっては冷淡に聞こえる時もあるが、手兵レニングラードの鍛え抜かれたアンサンブルが類稀な集中力を指揮者の下一点に結集させているためにただならぬ緊張感を感知させる。
第5番も例外なく彼の優れた構成力が示されていて、第1楽章は前奏曲のように、そしてチャイコフスキーのバレエ音楽さながらに展開する第2楽章、間奏曲風の第3楽章、更に終楽章で導く熱狂的なクライマックスというように曲想の個性をつぶさに掴み周到に起承転結が考え抜かれている。
また第4番冒頭のイングリッシュホルンが先行して奏でるテーマも決して官能的ではなく、抒情を抑えた素朴なパストラーレのように歌い上げて、続くそれぞれの楽章が絵画的に描写されるのも印象的だ。
バレエ組曲『四季』は7曲の抜粋になり、終曲「バッカナーレ」の騒然とした雰囲気もかなり厳しく統制されているが、硬直感はなくロシアの歳時記にヒューマンな温もりを与えている。
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