2016年12月09日
イザベル・ファウストのモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
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ドイツの女流ヴァイオリニスト、イザベル・ファウストが挑んだモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集で、彼女の颯爽たる感性とキレの良いテクニックが冴え渡ったフレッシュで軽妙洒脱なアルバムに仕上がっている。
近年ではオーケストラを含めたメンバー全員がピリオド楽器で演奏した同全集もリリースされるようになったが、実際にはそれほど多くなくカルミニョーラ&イル・クァルテットーネやツェートマイアー&ブリュッヘン盤以来の久々の企画になる。
オーケストラはピリオド・アンサンブルの吟遊詩人とも言えるジョヴァンニ・アントニーニ率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコだが、意外にも抑制を効かせた整然としたサポートがソロを引き立て、また第3番第2楽章やアダージョホ長調に代表されるイタリア式カンタービレも美しい。
おそらく唯一の例外は第5番終楽章のトリオ、トルコ行進曲での激しい応酬だろう。
ファウストもソロのスタンド・プレイを避け、オーケストラとの関係を緊密にすることで両者のバランスが絶妙に保たれている。
この2枚のCDには真作とされる5曲の協奏曲、変ロ長調とハ長調の2曲のロンド及びアダージョホ長調の8曲が収録されている。
モーツァルト自身によって書かれたヴァイオリン・ソロ用のカデンツァは遺されていないので、ソリストは必然的に既作のものを選択するか新しく創作することが求められる。
この演奏に採用されたそれぞれのカデンツァは、音楽学者でピリオド鍵盤楽器奏者のアンドレアス・シュタイアーが彼女のために書き下ろしたものだ。
短いながら曲中のテーマやモチーフを巧みに使ったパッセージや対位法的なもの、あるいはピチカートを効果的に取り入れるなど、彼の多様で機知に富んだセンスが凝縮された小気味良さが特徴だ。
アダージョホ長調では鳥の鳴き声さえ模倣しているが、勿論カデンツァが突出して一人歩きしないように、あくまでも古典派の音楽としての一貫したポリシーが貫かれている。
昨年2015年3月から今年の2月にかけてベルリンで収録されたもので、録音レベルがやや低いようだがボリュームを上げることで鮮明な音質を堪能できる。
3面折りたたみのデジパック入りで、ライナー・ノーツにはトラック・リスト及び英、仏、独語の解説の他にこの録音に参加したメンバー全員のリストと彼らの使用楽器が明記されている。
イザベル・ファウスト自身は1704年製のストラディヴァリウス『スリーピング・ビューティー:眠れる美女』を弾いていて、この名器はバーデン−ヴュルテンベルクL−Bankから彼女に貸与されているようだ。
明るく朗々とした音色と気品のある響きはモーツァルトの演奏には願ってもない楽器と言える。
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