2016年12月11日

クレンペラー&フィルハーモニア管のベートーヴェン:交響曲全集、序曲集


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クレンペラーの巨大とも言える音楽を満喫することが可能な圧倒的名演と高く評価したい。

ベートーヴェンは、クレンペラーの個性が、ハイドンやモーツァルト以上に生きるレパートリーである。

ベートーヴェンが志向し続けた、より良きものへ、より高きものへの意志を、クレンペラーは、竹を割ったような率直さの中に確然と表現するすべを知っており、どれもまず、傾聴に値する演奏と言えるだろう。

本演奏において、クレンペラーは悠揚迫らぬゆったりとしたテンポで曲想を精緻に、そして格調の高さをいささかも失うことなく描き出して行く。

クレンペラーは各楽器を力強く演奏させており、いささかも無機的な演奏に陥ることがなく、どこをとっても彫りの深い、隙間風が全く吹かない重厚な音楽が紡ぎ出されている。

演奏全体の造型はきわめて堅固であるが、スケールは極大であり、重厚にして重量感溢れる音楽が構築されている。

テンポの振幅は必要最小限に抑えるなど、小賢しいアプローチとは無縁であるが、木管楽器をやや強めに演奏させるのはいかにもクレンペラーならではのユニークなもので、これによって演奏がウドの大木になることを避ける結果となっており、演奏のどこをとっても彫りの深さが健在である。

巧言令色などとは全く無縁であり、飾り気が全くない微笑まない音楽であるが、これはまさに質実剛健な音楽と言えるのではないだろうか。

実直そのもので、ドラマティックな要素などは薬にしたくもなく、フルトヴェングラーによる人間のドラマ、カラヤンによる音のドラマとは異なるクレンペラー独自の音楽が展開されてゆく。

近年においては、ベートーヴェンの交響曲演奏は、ピリオド楽器やピリオド奏法による演奏が一般化しているが、本演奏は、そうした近年の傾向とは真逆の伝統的な、ドイツ正統派によるものと言えるだろう。

特に交響曲第3番、第5番、第7番、第9番における悠揚迫らぬゆったりとしたテンポによる演奏は、あたりを振り払うかのような威容に満ち溢れており、あたかも巨象が進軍するかのような重量感に満ち溢れている。

それでいて前述のように木管楽器を効果的に活かして、格調の高さを損なわない範囲において随所にスパイスを効かせるなど、クレンペラー独自の解釈が聴かれる。

このような微動だにしないインテンポによる威風堂々たる重厚なベートーヴェンにはただただ頭を垂れるのみである。

また、交響曲第1番、第2番、第4番、第8番のこれまでの様々な指揮者による演奏としては、ベートーヴェンの交響曲の中でも規模の小さい交響曲だけに比較的軽快に演奏されるものが多いが、クレンペラーは、あたかも大交響曲に接するかのようなスケールの雄大な演奏を行っており、おそらくは各曲の演奏史上でも最も構えの大きい演奏ではないだろうか。

それに、ベートーヴェンの交響曲の一般的な演奏スタイルとして、偶数番の交響曲は柔和に行うとの考えも一部にあるが、クレンペラーにはそのような考えは薬にしたくもなく、奇数番などに行うようなアプローチで偶数番の演奏に臨むことによって、スケール雄大な大交響曲に構築していった点を高く評価すべきであろう。

序曲集もクレンペラーのスケール雄大な音楽づくりを味わうことができる素晴らしい名演揃いだ。

したがって、クレンペラーによるベートーヴェンは、フルトヴェングラーやカラヤンによる名演も含め、古今東西の様々な指揮者による名演の中でも、最も峻厳で剛毅な名演と高く評価したい。

クレンペラーの確かな統率の下、フィルハーモニア管弦楽団もしっかりと付いていき、ドイツ風の重厚な音色を出すなど、最高のパフォーマンスを発揮していることも高く評価すべきものと考える。

いずれにしても、本演奏は、クレンペラーの巨大な芸術の凄さを十二分に満喫することが可能な素晴らしい名演として永遠に語り継がれるべき遺産であることは疑いの余地がない。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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